26年度春に設置した地下潅漑システム(FOEAS)の水田で、27年度に水稲「ななつぼし」を乾田直播で栽培し、生育と収量の調査および水温と地温を測定した。併行して、隣接した水田で、同品種を慣行移植で栽培して調査し、FOEAS水田と比較した。FOEAS水田ではコムギ播種機を利用して極めて短時間で播種が終了した。播種後に地下から潅漑水を与えて、地表5cm程度で水位を維持したところ、発芽・苗立ち率は極めて良好で95%を超えた。同時期に移植した慣行水田に比べて、幼穂形成期が10日、出穂期が7日遅れ、また出穂期までの地上部乾物重と葉面積指数がともに劣ったが、それ以降では両形質ともに優れた。収獲期はFOEAS水田で5日遅れたが、登熟歩合は90%を超えており、収量では両水田間で統計的に有意な差異が認められなかった。 水温と地温は、両水田で継続的な湛水(深さ5-10cm)を行った7月11日から8月21日の期間では、常にFOEAS水田の方が高く推移した。すなわち、水稲の障害型冷害の危険期である7月中下旬の平均水温は、FOEAS水田で24.8℃を示し、慣行水田よりも1.1℃高かった。地温は、深さ10 cmで0.4℃、20 cmで0.7℃、それぞれFOEAS水田の方が高かった。なお、水田に供給した潅漑水温は両区ともに19.6℃だった。 以上のことから、寒冷な北海道の水稲栽培において、FOEASを設置した水田で地下から潅漑すると、表面潅漑の慣行水田に比べて地温と田面水温を上昇できると結論した。
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