研究実績の概要 |
作物根系は複雑であり,評価が難しいため,これまでの研究で多くの有用な形質が見過ごされている可能性がある.このような見過ごされた根系の形質を発見・評価するためには,植物の発育に伴って変化する根系の形質に関する値をなるべく多く高効率に得て,それを評価することが重要である.そこで本研究では,作物の根系をコンピュータ画像解析の手法を用いて高精度かつ高効率に解析する技術を開発し,それを利用して作物根系の大量のデータを取得して,そのデータを総合的に解析することを目的とする.その目的において1.画像解析用の根系画像取得に適した作物栽培装置,2.時系列で根系画像を取得して蓄積するプログラム,3.取得した画像から根系の様々な形質をデータ化するプログラムの開発をおこない,4.データ化した形質の情報と作物の生育や栄養状態と関連づけて考察して,5.単子葉植物のイネと双子葉植物のダイズの遺伝解析用系統群を栽培して解析をおこなった.本年度は昨年度検討したデータ取得に適した作物栽培装置,時系列で根系画像を取得するシステムを改良しながら用いて,実際の作物の評価をおこなった.用いた作物はイネ遺伝子解析用系統群の一つであるササニシキ,ハバタキのCSSL系統である.これを用いて,イネ生育初期に注目して1,2日おきに根系の画像を取得して,そのデータを用いて根系のいくつかの形質をコードする遺伝子座の候補を絞り込むことができた.これにより発育に応じた根系形成を検討する基盤ができると考えている.
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