研究課題
日本型水稲品種コシヒカリの対立遺伝子が、イネの中で最高の光合成能力を示す多収性インド型品種タカナリを遺伝背景とするイネの葉の光合成速度をさらに高める5つの遺伝子座(第1染色体に座上するqHP1aとqHP1b、第3染色体に座上するqHP3、第7染色体に座上するqHP7aとqHP7b)を4つあるいは5つまで集積した準同質遺伝子系統(NIL)を完成させ、光合成速度を高める遺伝子座を1つもつNILから5つすべての遺伝子座を集積したNILまで計25のNILの光合成速度、乾物生産量、子実収量をタカナリと比較した。光合成速度はすべての系統でタカナリに比較して高い値を示し、光合成速度を高める遺伝子座の集積数が多くなるほど光合成速度は高くなる傾向を示した。遺伝子座を1つもつ系統と2つもつ系統の光合成速度の実測値から相加効果・相互作用を含めた予測モデルを作成して3つから5つの遺伝子座の集積系統の光合成速度を予測したところ、予測値と実測値との間に高い回帰係数 (R2=0.73) が得られ、遺伝子座が加わることによって光合成速度が相加的に増加することを確認できた。一方、光合成速度の遺伝子間相互作用は検出されなかった。光合成速度と葉のクロロフィル含量を示すSPAD値との間には有意な相関が認められたが、光合成速度と気孔伝導度との間には有意な相関は認められなかった。SPAD値と気孔伝導度を説明変数とした光合成速度に対する重回帰分析の寄与率は31%であった。収穫期の全乾物重は2系統でタカナリに比較して高くなったが、その他の系統ではタカナリを下回り、子実収量にはタカナリを超える系統は認められなかった。光合成速度を高める遺伝子座の集積効果を乾物生産や子実収量に及ぼすためには、出穂期を早めるなどの他の乾物生産や収量に関わる形質の遺伝子を含まない遺伝子座を集積していく必要があるものと考えられた。
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