研究課題
アジサイ(Hydrangea macrophylla)は高い酸性土壌耐性を持つ植物として知られ、ガク片液胞へ多量のAlを集積して青色に咲く。一方、葉にも数百ppmのアルミニウムを貯めることが報告されている。すでに、我々は、アジサイガク片より三種類のAl輸送体遺伝子(HmVALT、HmPALT1、HmPALT2)を取得し、液胞膜型のHmVALTが酸性土壌耐性に重要な役割を果たすことを報告した。しかし実際にこれらの輸送体がどのように誘導され発現するか、さらに、アジサイの組織において、どのようにAlが集積していくかの詳細は不明である。本研究では、挿し芽からアジサイを育て、Al添加の有無でアジサイ組織中のAl量がどのように変動するのか、その際にアルミニウム輸送体遺伝子はどのように量的変化をするかを経時的に分析した。土壌pHは+Alで3.9、-Alで4.1といずれも極めて強い酸性を示した。硫酸アルミニウムの添加による生育阻害は全く見られず+Alのアジサイはよりガク片の色が青くなった。ICPにより組織のAl量と定量したところ、-Alの葉、根、ガク片のAl含量はそれぞれ75.5、52.5、20.6 mg/kg FWであったのに対し+Alはそれぞれ180.8、90.7、46.8 mg/kgFWと、すべての組織において+AlでのAl含量は有意に高いことが明らかとなった。遺伝子発現量を定量したところ、HmVALTの発現量は、+Alで-Alよりも高く、挿し芽のステージを1とした場合、40日後に+Alは葉で32倍、根で9倍となり、-Alの3.5倍、5.7倍よりいずれも有意に高かった。これらのことは、Alにより耐性に関わる遺伝子の発現が誘導され、液胞へのAl輸送が活性かされることを示す。今後は、この誘導機構を解明することで、耐性機構を明らかにする。
2: おおむね順調に進展している
Al処理による組織へのAl集積量の増加とAl輸送体遺伝子の発現量の増加が初めて明らかにできた。アジサイの栽培は通年かかるため、ほぼ順調に進展しているものと判断する。
アジサイの栽培は通年かかるため、Al処理によ組織へのAl集積や遺伝子の発現誘導についてのデータの取得も同様に通年かかる。従って、本年の結果の再現性を次年度見る予定である。さらに、より短いタームでアルミニウム耐性を見ることのできる、アジサイのカルスおよび毛状根での実験を今後計画する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (14件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
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