研究実績の概要 |
酸性土壌は世界の耕地の約3割を占め、作物の生育に甚大な被害を及ぼす。土壌中のアルミニウムがイオンとして溶出し、植物の成長を阻害するからである。しかしアジサイ(Hydrangea macrophylla)を含めチャ (Camelia sinensis)やソバ(Fagopyrum esculentum)は酸性土壌耐性を獲得している。従来よりチャやソバは根から有機酸を分泌して、アルミニウムイオンと錯体を作りアルミニウムの吸収を防ぐとされるが、アジサイではアルミニウムイオンを取り込んだ上で無毒化する内部Al抵抗性機構の解明は遅れている。 我々は、アジサイの青色発色と酸性土壌耐性に関わるAl輸送と集積機構の研究を行い、2013年に液胞内へのAl輸送に関わる3種の輸送体(液胞膜局在型輸送体 : HmVALT, 細胞質膜局在型輸送体 : HmPALT1, HmPALT2)を同定した。植物における機能はシロイヌナズナで過剰発現株を用いたAl耐性試験で明らかにでき、HmVALT過剰発現株でアルミニウム耐性の獲得が確認できた。 本研究では、アジサイを異なる土壌アルミニウム濃度で栽培し、土壌pH測定、生育状況別のガク片、葉、根におけるAl含有量、Al輸送体遺伝子発現を経時的に解析した。その結果、酸性土壌では遺伝子の発現量が上昇、組織へのAl蓄積量が有意に増加した。 さらに、アジサイから取得した遺伝子(HmVALT, HmPALT1, HmPALT2)を導入したシロイヌナズナを、異なる土壌アルミニウム濃度で栽培し、土壌pH測定、葉、茎におけるAl含有量、Al輸送体遺伝子の発現を経時的に解析した。0.5 mM AlCl3 水溶液を吸水させ栽培したシロイヌナズナでは野生種(cv. Col-0)の一部は生育不良を起こし葉の枯死が観察されたが、HmVALT過剰発現株では開花まで問題無く生育することがわかった。
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