ローラー法および機械的摩砕法を用いて,塩ストレス暴露したトウモロコシ葉組織から純度の高い葉肉細胞抽出物と維管束鞘細胞群を単離する系を確立できた。トウモロコシの両光合成細胞において,ストレスに伴い発現変動に差異が生じる遺伝子の調査を行った。 葉肉葉緑体と維管束鞘葉緑体では塩ストレスに伴う傷害発現に差異が見られることから,両葉緑体の膜脂質組成がストレスに伴いどのように変動するかを調べた。その結果,モノガラクトシルジアシルグリセロール(MGDG)含量は,塩ストレスにより葉肉葉緑体において減少したが,維管束鞘葉緑体では変化しなかった。一方,ジガラクトシルジアシルグリセロール(DGDG)含量は,両葉緑体ともに塩ストレスに影響されなかった。MGDG,DGDGは膜の安定化を左右する脂質だと考えられており,両葉緑体間でのグリセロ脂質組成の差異が膜傷害誘発の原因である可能性が予想される。したがって,これらの膜脂質の合成・分解に関与する遺伝子の発現を引き続き調査することにした。
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