研究実績の概要 |
高等植物の花粉は、二細胞性(二核性)花粉と三細胞性(三核性)花粉の二つのタイプがある。二細胞性花粉は成熟時に栄養核と雄原細胞の二つの核を含み、柱頭上で発芽した後に花柱内で雄原細胞が分裂して精細胞を形成する。その後、子房内に達した花粉管は珠孔から胚珠に侵入して卵細胞と中央細胞に精細胞を運搬する。これらのプロセスは巧妙に制御されている。本研究では二細胞花粉を持つアルストロメリアを材料に用い、成熟花粉および花粉発芽過程のダイナミクスを明らかにするために、これまで開発してきた液体培地による花粉発芽系を用いて花粉および花粉管のオミクス解析を行った。 成熟花粉(100粒、500粒、1000粒)、発芽花粉(発芽直後、培養開始6, 12, 18時間後)を供試し、質量分析装置を用いたプロテオーム分析を行った。花粉は顕微鏡下でマイクロキャピラリーを用いて回収し、その後、タンパク質の抽出と精製、還元アルキル化およびトリプシン処理を行い、FT-MSとIT-MS/MSの組み合わせで測定を行った。データ取得後、NCBInr, Swiss-Prot, Arabidopsis thaliana (NCBI), Oryza sativa (NCBI)の四つのデータベースを使用して解析を行った。 その結果、同定されたタンパク質数は、成熟花粉:113個、発芽直後:106、6時間後:93、12時間後:87、18時間後:86と減少傾向にあった。また、花粉の発芽・花粉管伸長に伴い18個のタンパク質が消失、9個のタンパク質が新たに出現、42個のタンパク質が常に出現しているデータを得た。本研究により、花粉管内におけるタンパク質の動態を解析する手法を確立することができた。
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