研究実績の概要 |
花粉に内包される核の数の数によって二種類に分けられる。雄原細胞と栄養細胞を含む二細胞性花粉と、二つの精細胞と一つの栄養細胞を含む三細胞性花粉である。二細胞性花粉は柱頭で発芽後、花粉管伸長の過程で雄原細胞が分裂して二つの精細胞を形成する。この細胞分裂(精細胞形成)はこれまでに開発した液体培地でも再現できることが分かった。この液体培地を用いた花粉培養系を用いて、二細胞性花粉を持つペチュニア(ナス科)、ボタン(ボタン科)の花粉伸長過程の解析とアルストロメリア(アルストロメリア科)を用いた花粉管内容物の網羅的解析(メタボローム解析)を行った。 ペチュニア8品種を供試して花粉発芽率の比較を行った。花粉発芽率の高い品種を用いて、花粉管伸長過程における核相の変化について顕微鏡観察を行った。花粉発芽の経過時間毎にDAPI(4′,6-diamidino-2-phenylindole)による核染色を行い、蛍光顕微鏡を用いて観察したところ、培養開始12時間後から雄原細胞の分裂が観察された。雄原細胞の分裂は、核相の変化としてフローサイトメトリーでも確認することができた。 ボタンについては、8品種を供試して花粉発芽率の比較を行った。発芽率の高い‘新国色’を用いて、核相の変化を解析した。DAPI染色による蛍光観察の結果、培養15時間以降に雄原細胞の分裂が観察された。フローサイトメトリーでも雄性配偶子の動態を検出することができた。 アルストロメリアを供試して、単一の花粉管内容物を網羅的に解析するメタボローム分析について実験を行った。液体花粉発芽培地でアルストロメリアの花粉を発芽させた後、シリンジに接続したチップで花粉内容物を吸引し、直ちにLC-MS分析を行った。その結果、およそ1500の質量スペクトルをKEGGデータベースに照合し、花粉管内に生じる化合物を推定することができた。
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