研究課題/領域番号 |
26660020
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
井上 栄一 茨城大学, 農学部, 教授 (90292482)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ニホンナシ / 豊水 / みつ症 / 4倍体 / 生理障害 / 原因遺伝子 / マイクロアレイ解析 / 定量的PCR |
研究実績の概要 |
ニホンナシ果実の生理障害「みつ症」は,発生機構が解明されていないことから,対策が難しく生産者を悩ませている.本研究ではこれまでに豊水四倍体においてみつ症が激発することを明らかにしている.そして,豊水の原品種と四倍体の果実の生育パターンとそれにともなう遺伝子発現の変化を網羅的に比較することで,「みつ症」の原因遺伝子の解明を目指している. 本年度は,昨年度,既知の情報に基づいて選抜した遺伝子についての複数年にわたる詳細な解析を行った.さらに,マイクロアレイ解析の情報を考慮して,原因候補遺伝子の絞り込みを進めた. 果実の生育段階ごとに採取した複数年の試料についてリアルタイムPCRによる解析を行ったところ,糖代謝に関わる細胞壁局在型酸性インベルターゼが複数年にわたって,四倍体において「みつ症」発症前に高発現となることが明らかになった.また,スクロースシンターゼについても,四倍体において高い値が示されていた.さらに,四倍体では果実成熟後期における果汁のスクロース含有量が原品種よりも有意に低かった.以上の結果を総合して,ニホンナシにおいては,スクロースの合成と代謝に関連する遺伝子発現と「みつ症」の発症に関連があると推察した. これら成果の一部は,園芸学会平成28年度春季大会において口頭発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度も予算の都合によりマイクロアレイ解析は行っていない.しかし代替策として,既知の情報に基づいて選抜した遺伝子について,複数年にわたる詳細な解析を行った.また,既存のマイクロアレイ解析情報を考慮して,原因候補遺伝子の絞り込みを進めることができた.さらに,これまでの研究成果を関連学会の講演会で発表し,関連分野の専門家による評価を受けることができた.
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今後の研究の推進方策 |
材料とする豊水四倍体については,これまでに行った複数年にわたる果実生育パターンの調査によって,みつ症発現の特徴付けがほぼ完了している.また,原因遺伝子についても多数の情報が得られている.このため,本年度は最終年度にあたり,これまでの情報を総合して,「みつ症」の遺伝的発生機構を検証し,考察していく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
採択総額が申請額から大幅に減額されたことによって,多額の経費が必要なマイクロアレイ解析を行うことができなかった.このため次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の予算と合計することで十分な解析を行う予定である.
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