本年度に得られた主な成果は以下の通りである. 1. 開花直前に12時間の暗期を与えて開花を誘導したアサガオ(品種「紫」)の切り花では,暗期を与えず開花を抑制した切り花に比べ,花弁展開時にメラトニン含量が有意に増加することを確認した.このことから,開花時のアサガオ花弁におけるメラトニン含量の増加が開花と同様に暗期誘導性であることが示された. 2. メラトニン合成阻害剤であるN-アセチルトリプタミン(NAT)をアサガオ切り花に処理し,暗期誘導性の開花への関与が示唆されている暗期応答遺伝子および花弁展開関連遺伝子の発現への影響を調査した.その結果,いずれの遺伝子も転写量に変化は見られず,メラトニンによる花弁展開の促進にこれらの遺伝子が関与しないことが示唆された.
本研究により得られた成果は以下の通りである. 暗期処理で開花を誘導したアサガオ切り花にメラトニンを処理すると,花弁の展開時間が短縮され,開花時刻が早まることを確認した.一方,NATを処理すると,花弁のメラトニン含量が減少するとともに,花弁の展開時間が延長され,開花時刻に遅れが生じることも確認した.以上から,メラトニンが暗期によって誘導されるアサガオの花弁展開を加速することで開花時刻を促進的に制御していることが示唆された.また,12時間の暗期を与えたアサガオ切り花では,展開時の花弁でメラトニン合成酵素遺伝子の転写量およびメラトニン含量が特異的に増加することが確認され,メラトニンが暗期により誘導されるアサガオの開花(花弁展開)に関与することが強く示唆された.以上,本研究で得られた知見は,メラトニン合成酵素遺伝子の発現制御により開花時刻を遺伝的に制御することで,開花時刻の最適化が可能となり,花の観賞期間や受粉効率の改善による結実率を向上させた品種を育成するための新たな分子育種技術の開発に役立つことが期待される.
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