本研究では、ペチュニアの野生種の一つであり、夜香性の Petunia axillaris (アキシラリス)など芳香族香気成分を発散させる植物を用いて、香気成分の代謝あるいは分解産物の構造を明らかにすることを目的としている。これまでに、アキシラリス花弁のメタボローム解析により、芳香族香気成分の芳香環に水酸基が付加した香気成分代謝産物の候補化合物が得られた。また、これまでにない香りを持つペチュニア新品種の香気成分の解析により、既存のペチュニア野生種、品種にはない香気成分組成であることが明らかになった。しかし平成28年度に所属研究機関において、ペチュニア組換え体が一般温室にて栽培されていた件が発覚し、研究材料が手に入らず研究が滞った。平成28年秋以降にペチュニアは栽培可能とはなったが、ペチュニア株数が大幅に減少したため、ペチュニア以外の材料を検索する必要が生じた。 今年度は、芳香族香気成分を多く有する夜香性のユリの代謝産物の動態を明らかにするために、ユリ花弁のメタボローム解析を行った。ユリは切り花として販売されていることから、材料を通年入手することが可能である。12時間日長のインキュベータに置いたユリ切り花より12時間日長(6-18時明/18-6時暗)、25℃一定のインキュベータ中に置き、昼12時、夜0時の2点で花弁のサンプリングを行った。それらの花弁サンプルについて、CE-TOFMSによるメタボローム解析を行った。その結果ペチュニアと同様に、昼12時のサンプルから芳香環に水酸基が付加した候補化合物が得られた。今後、その化合物をペチュニアあるいはユリから抽出し、構造決定を行う。
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