研究課題
我々はこれまで外から植物体に投与したアスコルビン酸(AsA)が抗ウイルス性を発揮することを観察している。ウイルスの接種前後でAsAの合成・分解に関する遺伝子や酸化・還元のリサイクルに関与する遺伝子の発現変動をreal-time RT-PCRによって解析したところ、酸化型AsAを還元するDHAR遺伝子の発現量が特に高くなることを見いだした。詳細にDHARの発現のタイミングを解析したところ、接種後にすぐ上昇することから接種時の傷によって誘導されるものと考えられた。さらに、ウイルス感染によって還元型AsAを酸化するAPXやAO遺伝子の発現が上昇することから、ウイルス感染初期では、AsAの酸化・還元が活発に起きているものと予想された。AsAや酸化型AsAは細胞内で安定にマイナスにチャージしているおり、プラスにチャージしているウイルスのRNAサイレンシングサプレッサーに結合してその機能を阻害することがウイルス抵抗性のメカニズムである可能性が高い。傷でDHARの発現上昇が観察されることから、傷による遺伝子発現誘導時に活躍するホルモン、ジャスモン酸(JA)によって同様の結果が期待できる。JAを予め植物体に噴霧し、その後に外からAsAの前駆体であるL-galactoseを投与した場合、内在性AsAの量が2倍以上に増加し、強いウイルス抵抗性を示した。このことから、AsA量が上昇した時にJAによって誘導されるDHARがウイルス抵抗性に大きく貢献しているものと結論した。
2: おおむね順調に進展している
アスコルビン酸(AsA)を植物体に投与すると抗ウイルス性を示す。ウイルスを接種したときに発現変動するAsA合成・分解あるいはリサイクルに関与する遺伝子を解析し、DHAR遺伝子がAsAのウイルス抵抗性に重要であると結論した。計画書に沿って順調にキー遺伝子を同定できたものの、今後他の遺伝子との関連を調べていく必要がある。
AsAが植物体で抗ウイル性を発揮するために重要であるDHAR遺伝子の発現に植物ホルモンであるジャスモン酸(JA)が関わっている可能性が高い。今後、このJAによるDHAR遺伝子の制御を解析し、高度なウイルス抵抗性をJAによって誘導し、AsAを抗ウイルス剤として実用化する道を検討したい。
3月末納品済みであるが支払いは4月に行われるため。
支払い済み。
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