研究課題
ファイトプラズマ(Phytoplasma)は世界各地で甚大な被害を引き起こす病原細菌であり、植物の篩部細胞内に寄生する。その防除法の確立が待たれるが、培養や形質転換が困難なことから、その分子生物学的研究は進んでおらず、抵抗性に関わる知見も乏しい。本研究では、ファイトプラズマが引き起こす篩部壊死には植物の免疫応答が関与するとの推測のもと、その応答を抑制することでファイトプラズマ耐性植物の育種を目指す。平成26年度は、ファイトプラズマが引き起こす篩部壊死のメカニズムを解明する目的で、実験系の確立および感染植物を用いて構造細胞学的な解析を行った。植物には、遺伝情報が最も豊富なシロイヌナズナを用いた。ファイトプラズマの接種試験を行い、ファイトプラズマの感染によってシロイヌナズナに篩部壊死が起こることをトリパンブルー染色によって明らかにした。さらに、実験条件を検討し、篩部壊死の検出法を最適化した。感染による篩部壊死は、光合成産物の転流阻害を引き起こし、病徴発現に関与する可能性が示唆されている。そこで、ファイトプラズマ感染による転流阻害を検証する目的で、ファイトプラズマ感染葉における糖蓄積量をLC-TOF-MSにより測定し、健全葉をコントロールとして比較解析した。その結果、ファイトプラズマ感染により測定したいずれの糖濃度も上昇し、特にSucrose濃度は健全の約1000倍と異常に蓄積することが判明した。以上より、ファイトプラズマ感染による篩部壊死およびその影響が明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、シロイヌナズナを用いた実験系を確立させ、ファイトプラズマが引き起こす篩部壊死を検出するに至った。さらに、篩部壊死の検出条件を最適化するとともに、篩部壊死による転流阻害を見出した。これらの成果を学会等で報告でき、次年度の研究に向けた準備作業も順調に進んでいることから、おおむね順調に進展していると判断した。
今後は、本年度の成果を踏まえ、ファイトプラズマ感染時の植物側の免疫応答についてその全体像に迫りたいと考えている。具体的には、シロイヌナズナの変異体を用いた接種試験により、ファイトプラズマが引き起こす病徴に関与する植物側の宿主因子について解析を進め、耐性植物の創出を目指す。
研究の進捗状況から、次年度は植物栽培に必要なプラスチック用品や酵素等の試薬類など、高額な消耗品が必要になる見込みであるため。
次年度の研究費は、主に消耗品の購入のために使用する予定である。高額な機器の購入予定はない。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (3件)
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