研究課題
1. マイコウイルスMoCV1Aに感染したイネいもち病菌の病原性が変化することを確認するために、MoCV1A自然感染親株(WI)、単胞子分離等より獲得したウイルスフリー化株(WF)、WF株にハイグロマイシン耐性変異マーカーを導入したフリー化株(HF)を作出すると共に、HF株と親株WI株とを菌糸融合してハイグロマイシン耐性の人工再感染株(HI)を作出した。それら4種の菌株を国際イネ判別品種に接種して病原性を繰返し確認したところ、親株WI株がフリー化(WF及びHF)することにより、病原性は特定の判別品種に対して、R→S、S→Rの両方向に変化し、再感染させたHI株では元の親株WI株の病原性にほぼ可逆的に復帰した。すなわち、MoCV1A感染はイネいもち病菌の特定の病原性レースを両方向に変異しえること、生育などは概して抑制されることが示唆された。2. イネいもち病菌の非病原性(Avr)遺伝子の発現量について、遺伝子構造が明確なAvr-Pikをreal-time RT-PCRで発現量解析したところ、MoCV1A感染により発現量が変化することが実証され、MoCV1Aがいもち病菌の遺伝子発現をエピジェネティックに制御していることが示唆された。3. 独自開発した簡易検出法のone-step RT-PCR法、RT-LAMP法と従来の菌体のdsRNA抽出と電気泳動解析の併用により、日本各地区のイネいもち病菌保存株から、MoCV1類を含むマイコウイルス類が昔から広く分布していること、MoCV1類はゲノム配列からベトナムで見出されたものと近縁であること、既報のMoV1、MoV2と重複感染しているもの、新規エンドロナウイルスに感染しているものも確認された。今まで明確な影響が未報であったMoV2も宿主菌の病原性を昂進させること、MoCV1Aとの重複感染によりさらに病原性が昂進されることも確認された。
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