研究課題/領域番号 |
26660035
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
一瀬 勇規 岡山大学, その他の研究科, 教授 (50213004)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | タバコ野火病菌 / 走化性 / MCP / 植物ホルモン / ジャスモン酸 / 有機酸 |
研究実績の概要 |
今年度は、1) タバコ野火病菌(Pseudomonas syringae pv. tabaci (Pta) 6605)を用いた走化性試験法の確立と、2) Pta 6605のmethyl accepting protein (MCP)遺伝子のうち、近縁の動物病原細菌である緑膿菌(P. aeruginosa)には存在しないmcp遺伝子に着目し、その欠損変異株の作出を目標に研究を実施した。 走化性試験法を確立するために、Pta 6605を前培養後、集菌のための遠心条件、再建濁の緩衝液の組成やpHなどを検討し、まず、正の走化性を示すと予測した酵母抽出液やカザミノ酸に対する走化性を観察した。その結果、適切な菌調整法を得たので、次にアミノ酸、有機酸、植物ホルモンや植物二次代謝産物などに対する走化性を解析した。その結果、一部の有機酸に対する非常に強い正の走化性や、一部の有機酸や植物ホルモンに対するやや強い走化性を観察した。 Pta 6605のドラフトゲノムシークエンスと全塩基配列が確定済みのP. syringae pv. pahaseolicola 1448Aや、pv. tomato DC3000、pv. syringae B728aのゲノム解析からPta 6605では少なくとも45個のmcp遺伝子が存在することが判明した。今年度はこのうち、緑膿菌には存在しないmcpを特定し、それらを前後の配列とともにクローニング後、合計20のmcp遺伝子について、mcpの読み枠部分のみを選択的に欠損させる変異株の作出に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
走化性試験法の確立に向けて、キャピラリー作成に必要なプーラーや顕微鏡にセットするマニピュレーター、カメラを購入した。また、走化性研究者のラボを訪問して、Pta 6605を用いた研究システムの確立を達成することができた。Pta 6605の野生株を用いていくつかの化合物に対して走化性試験を実施したところ、特に強い走化性を示す有機酸を始め、いくつかの誘因物質を同定した。一方、それらの誘因物質の受容体であるMCPを同定するため、Pta 6605のゲノム情報から20個の植物病原細菌特異的mcp遺伝子を同定し、それらを欠損させた変異株の作出に成功した。これらのことから本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に作出した20種類の異なるmcp欠損変異株を用い、Pta 6605が強い走化性を示すことが判明した有機酸や植物ホルモン等の化合物に対する走化性を検証し、有機酸あるいは植物ホルモンに対するMCPの同定を試みる。もし、特定の化合物に対する走化性が低下した変異株が特定できたならば、その変異株のタバコに対する病原力を検証する。されに野生株を用いて、平成26年度に未解析の化合物に対する走化性を検証するとおもに、タバコなどの植物抽出液や浸出液に対する走化性も検証する。
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