研究課題
宿主植物の細胞間隙へ侵入直後の植物細胞表面への固着とバイフィルム形成によるコロニー化は、青枯病菌の病原性確立に不可欠な感染過程である。本年度は、このコロニー化に関わる青枯病菌の二次代謝物質を同定し、その産生系の解明と機能解析を行うことを目標とした。まず、青枯病菌OE1-1株から新たなクオルモン3-hydroxymyristic acid methyl ester (3OH-MAME)を同定した。さらに、それに対する受容体PhcSタンパク質との結合様式とともに、クオラムセンシング誘導機構を分子生物学的・分子進化学的に解析し、青枯病菌は、それぞれが産出するクオルモンに応じたクオラムセンシング機構を有することを明らかにした。それらの結果を基に、コロニー化がクオラムセンシングに依存することを明らかにし、コロニー化に関わるシグナル伝達系を部分的に解明した。さらに、クオラムセンシングにより合成が誘導されるラルフラノン化合物の網羅的に同定し、その産生系を明らかにした。機能解析から、ラルフラノン化合物が、バイオフィルム形成に関わる菌体外多糖の生合成系の制御のみならず、青枯病菌の環境応答に関わる二成分制御系のセンサーカイネースとレスポンスレギュレーターの発現の恒常性に関与することを明らかにした。興味深いことに、固着とバイオフィルム形成とともに、コロニー化にとって重要な植物免疫の回避に不可欠なⅢ型分泌系の構造タンパク質をコードするhrp遺伝子群の発現に関わる二成分制御系のセンサーカイネースとレスポンスレギュレーターの発現の恒常性にも関与していた。すなわち、ラルフラノン化合物は、クオラムセンシングに支配される細胞間隙へ侵入直後のコロニー化において、セカンドメッセンジャーとして機能することを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
本年度の成果は、メタボローム解析で同定した二次代謝産物3-OH MAMEと、ラルフラノン化合物の機能を生化学解析により明らかにするとともに、ゲノム情報を基にしたトランスクリプトーム解析により、それらの生合成機構を明らかにした。さらに、ゲノム情報とトランスクリプトーム情報を基に作製した変異株を用いた分子遺伝学解析により、それら二次代謝物質により制御される形質と、それら形質に関わる遺伝子の探索の発現制御系を明らかにすることができた。さらに、これらオミクス解析と、in vitroにおけるバイオフィルム形成システムとその走査型電子顕微鏡解析システムを組み合わせたことにより、青枯病菌のコロニー化機構の網羅的に解明を行うための、基盤情報と実験系を得ることができた。
宿主植物の細胞間隙へ侵入直後の植物細胞表面への固着とバイフィルム形成によるコロニー化におけるセカンドメッセンジャーとしてのラルフラノン化合物の機能を、本年度に確立した実験系を用いて、明らかにする。その結果を基に、青枯病菌のコロニー化機構の網羅的解明に資する、解析法を開発する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 2件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (12件) (うち招待講演 1件)
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