日本はもとより世界中のトマト圃場ではトマト黄化葉巻ウイルス(TYLCV)による病気が激発しており、その対策が求められている。そこで本研究課題では、まれに発病トマトから病徴を示さない葉が展葉する現象(リカバリー)に着目し、そのメカニズムと治療法の開発を検討することを目指した。 昨年度は30℃および35℃におけるリカバリー現象の出現を検討したが、高温による生理障害が発生した植物が多く、また、リカバリーした植物の数も少なく、35℃ではその傾向がより顕著だった。そこで今年度は栽培条件を30℃に設定し、給水などの栽培環境の改善に加え、より多くの植物を用いてリカバリーの観察を行った。まず、24℃においてTYLCVの感染性クローンを接種し、発病を確認したトマトを30℃に移行したところ、移行してから17日後には8株中2株でリカバリーが確認された。また45日後ではさらに2株のリカバリーが確認できた。このことから、30℃においてリカバリーは一定の割合で発生するもののその頻度は約50%と低く、高温に移行するだけでは実用的な防除法とはならないものと考えられた。 また、リカバリーした葉からはPCRによりTYLCVが検出されたことから、リカバリーではウイルス移行が抑えられないことが確認された。
|