1.いもち病菌がトマト茎葉部表面で付着器を形成し、感染糸を侵入させる条件の確立:いもち病菌P-2株の分生子懸濁液をトマト葉面に接種して感染挙動と条件を調査した。その結果、分生子が付着、発芽し、高頻度で付着器を形成する条件を見出した。しかし、感染糸がトマト葉組織・細胞に侵入させているか観察されていない。これは、GFP等蛍光タンパク質発現形質転換体を用いても同様であった。ただし、4に示すように、AVR1を発現する形質転換体で萎凋病の生物防除効果が見られることから、感染糸を侵入させている可能性が高い。 2.感染能を持つものの非あるいは弱病原性のいもち病菌菌株の選抜・確立:イネいもち病菌P-2株分生子懸濁液に、99.9%以上致死となる条件で高深度LED-UVを照射、照射後の分生子をイネ葉面に接種、病斑の出ない部分からいもち病菌を分離し、非あるいは弱病原性の変異株の取得を試みたが、現在まで取得できていない。 3.形質転換による分泌型非病原力遺伝子SIX4タンパク質産生いもち病菌の作出:いもち病菌P-2株の分泌型非病原力遺伝子SIX4タンパク質産生形質転換体を取得した。 4.分泌型非病原力遺伝子SIX4タンパク質発現形質転換体を用いたトマト萎凋病発病抑制効果試験:非病原性トマト萎凋病菌に分泌型非病原力遺伝子SIX4タンパク質遺伝子を導入、得られた形質転換体の前処理による、トマト萎凋病の発病抑制効果を見出した。さらに、3で取得した分泌型非病原力遺伝子SIX4タンパク質産生いもち病菌形質転換体をトマト根部や茎葉部に前処理後、トマト萎凋病菌を灌注接種したところ、目論見通り、萎凋病の発病が有意に抑制された。これは、「バイオマイクロシリンジ」による非病原力タンパク質の病害防除への利用のチャレンジに成功したことを意味する。
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