ニホンジカやイノシシの捕獲には「経験や勘」が重要視されているため、捕獲技術向上のための体系化された育成プログラムがほとんどない。そのため、担い手となる新米猟師への捕獲技術の継承に時間がかかるといった問題が指摘されている。 「経験や勘」を細かく解析すれば、その根拠となるものは、行動学、解剖学、環境学、生態学、気象学などの様々な科学的なデータとして置換することが可能である。そこで本研究では、「経験や勘」といった言葉で片づけられてきた捕獲技術を科学的に分析することにより、高捕獲効率狩猟者の行動特性を解明し、捕獲技術の最適化を目的とする。 本年度は、くくり罠によるわな猟について、これまで新米狩猟者でも容易に捕獲することができる誘引誘導型捕獲法を狩猟未経験の新米狩猟者を対象に捕獲方法を伝え、実際にどれ程捕獲できるのか検証を行った。その結果、1人68日間でニホンジカ130頭およびイノシシ5頭を捕獲した(12月前半23頭、12月後半15頭、1月前22頭、1月後半40頭、2月前半35頭)。ニホンジカの雌雄比は、1:1.06でほぼ同比であった。罠は15~28基の範囲内で運用し、捕獲効率(捕獲頭数/(罠数×日数)は0.099で、捕獲した日における平均頭数は2.5頭(最大7頭)であった。罠の設置数は25エリア63ヶ所でその内約6割の罠で複数回の捕獲ができている。最大で1基の同所同一罠で20日間に12頭を捕獲した事例もあった。また捕獲技術の他に捕獲個体を野生獣肉解体処理施設に持ち込むことで処理労力を軽減できたことが多頭捕獲に繋がった。 本調査により、餌を用いて誘導し、くくり罠で捕獲する誘引誘導型捕獲法が、未経験の狩猟者であっても短期間で多頭捕獲を実現し、また効率よく捕獲する上での条件の最適化も行えた。
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