水生有害生物の駆除を目的として、細胞損傷作用部位、水生動物細胞認識部位とBacillus thuringiensis (Bt)由来のタンパク質結晶化因子(Cterタグ)を融合したタンパク質毒素の作製を試みている。本法は、結晶化因子により水溶性タンパク質を不溶化することで毒素の濃縮を可能にし、それにより標的生物に致死量を摂取させることができる。さらに、不溶化することで水中散布での毒素の希釈や流失を抑え、不必要な環境汚染を防ぐことができる斬新な手法である。 本研究で目指すのは、標的細胞認識部位、細胞損傷作用部位、毒素タンパク質の結晶化因子をつないだキメラ型の食毒性タンパク質の作製である。平成26-27年度は、タンパク質毒素の各パーツの探索および調製、発現系の構築と標的有害生物に対する毒性試験法の検討を行った。標的細胞認識部位は、本研究室で収集した土壌細菌が産生するタンパク質の中から水生有害生物に毒性を示す有望なものを選抜した。平成28年度は、これらの中からボウフラに対して高い食毒性を示すCry46Abについて水に不溶の顆粒として調製する方法を確立し、他の水生生物を用いた生物検定を行った。その結果、Cry46Abはボウフラ、ジャンボタニシ、ナメクジ、ミジンコなどに致死性を示すが、メダカには影響を及ぼさないことから、本研究が目的とする水生有害生物駆除のためのタンパク質の開発に使用できることが分かった。また、細胞損傷作用部位は小孔形成毒素(Pore Forming Toxin)のグループに属するライセニンやアエロリシンなどの毒素の立体構造に似ており、それらを参考にして候補タンパク質の細胞膜貫通部位、小孔形成に必要なオリゴマー化などを検討している。結晶化については、Bt細胞を用いた発現系を確立し、Bt細胞内でのタンパク質結晶化に必要なCterタグの最適領域の検討を行った。
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