研究課題/領域番号 |
26660045
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研究機関 | 国立研究開発法人農業生物資源研究所 |
研究代表者 |
長谷川 毅 国立研究開発法人農業生物資源研究所, その他部局等, 主任研究員 (30414931)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 口針鞘 / ツマグロヨコバイ |
研究実績の概要 |
口針鞘構成タンパク質の分離・同定 26年度に開発した大量回収法によって採集したツマグロヨコバイ口針鞘をサンプルとした。口針鞘に夾雑したアガロースゲルを除き、ラウリル硫酸ナトリウム(SDS)と2-メルカプトエタノール(ジスルフィド結合を乖離する)を含んだSDS-PAGEサンプルバッファーで易溶性の口針鞘構成タンパク質を溶出した。次いで、不溶成分を26年度に開発した手法に従って溶解した。易溶性と難溶性の口針鞘構成タンパク質サンプルをそれぞれ、10-20%グラジエントSDS-PAGEゲルを用いて分析を試みたところ、通常でのタンパク質の同定が可能と考えられる状態で分離することに成功した。これらをPVDFメンブレンに転写し後の解析に用いた。易溶性のサンプルについては、複雑な架橋がタンパク質内部やタンパク質間で起こっていないと推定し、5種のタンパク質についてN末端解析を行った。しかし、いずれも解析不能のサンプルであった。 ツマグロヨコバイ唾液腺発現遺伝子データベースの作成 難溶性のタンパク質の解析については、LC-MS/MSを行う予定である。そのために必要な唾液腺発現遺伝子データベースを作成した。唾液腺は、口針鞘構成タンパク質の産生・分泌を担う器官である。連携協力者から提供されたツマグロヨコバイ唾液腺のRNAseqデータをもとに、口針鞘構成タンパク質同定のための完全長データベースを作成した。口針鞘のコア部分を構成するタンパク質は、構造性のタンパク質である可能性がある。構想性タンパク質は、アミノ酸の極端な偏りや高度の反復配列を持つものが多い。唾液腺で上位に発現するものには、多くの構造性タンパク質と推定されるものが含まれているが、それらの多くは現時点での配列結合のアルゴリズムでは正確な配列が得られない。これらについて、修正を加え完全長を決定したデータベースを作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
通常では解析可能なレベルに分離できているタンパク質が解析できないため。同様の現象がアブラムシの口針鞘構成タンパク質の解析でも知られている。この原因は、不明であり報告はない。口針鞘は凝固性のタンパク質を含む唾液から構成される。この凝固の様式は、タンパク質分子内および分子間での架橋が推定されている。この架橋が特異的に起こる分子については、SDS-PAGEで単一のバンドとして得られる可能性がある。N末端のアミノ酸分析では、チャート上に複数のアミノ酸が認められる例があり、N末端も複数存在する可能性が示唆される。このことは、もしかすると単一のバンドの中に、架橋により複数のタンパク分子が存在することが原因で起こっているのかもしれない。今後は、これらのタンパク質について分解を行う必要があるかもしれない。そのことからLC-MS/MSによる解析が適していると考えられ、難溶性成分とともに同様の解析を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
・精製したタンパク質についてLC-MS/MS等を用いて解析し、アミノ酸配列情報を明らかにする。 ・作成したデータベースを用いてタンパク質の同定を行い口針鞘構成タンパク質を同定する。また、そのタンパク質をコードする遺伝子を特定する。 ・同定された口針鞘構成タンパク質をコードする遺伝子を、dsRNAのインジェクションおよび吸汁法を用いてノックダウンを行い、遺伝子発現、死亡率の変化などを解析する。 ・同定された口針鞘タンパク質と相同のタンパク質を、特にカメムシ目昆虫を中心に解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
通常では解析可能だと考えられるタンパク質が、解析ができなかったため。このため、やや遅れを生じ、本来、LC-MS/MSなどの依頼分析が行えなかったことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は、昨年度と異なる解析方法(LC-MS/MS)を用いて、易溶性および難溶性のタンパク質の分析を行う。このための委託経費として使用する。
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