研究課題/領域番号 |
26660046
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山口 淳二 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10183120)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 花成 / 栄養素代謝 / シグナル伝達 / メタボローム / マイクロアレイ |
研究実績の概要 |
本研究では「栄養素シグナルによる植物の花成制御機構の解明」を目指し,以下の3研究課題に取組んでいる。H26年度の解析結果として,以下のような成果を得た。 1)花成変異体を用いたC/N誘導性花成の解析:C/N応答性の花成を検証する実験系として,大気中CO2濃度と根圏窒素栄養条件の制御をによるC/N処理系を確立した。野生型植物では高CO2/低窒素条件で花成が促進されること,さらに花成制御のマスターレギュレーターの1つであるFTの機能欠損変異体では,そうしたC/N応答性の花成促進効果が抑圧されていることから,C/NシグナルがFT経路の上流で花成シグナルとクロストークすることが分かった。現在,FT上流のシグナル伝達因子との詳細な関係について解析を進めている。 2)C/N誘導性花成におけるシグナル伝達ネットワークの解析:C/N処理後のリン酸化プロテオーム解析から,C/N誘導性花成のシグナル伝達因子候補として転写因子FBH4が同定された。一過的レポーター解析から,C/N応答性のリン酸化部位がFBH4の転写活性に重要なことが示された。 3)メタボローム解析によるC/N誘導性花成鍵代謝物の同定:C/N処理後のメタボローム解析から,糖代謝物であるトレハロース-6リン酸の量が顕著なC/N応答性を示すことが確認された。トレハロース-6リン酸はシグナル因子として機能することが注目されており,C/N応答シグナルとの関係性について詳細な解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3つの研究課題それぞれにおいて当初計画即した進展が見られた。特に,本研究の中核となるリン酸化プロテオーム解析に関して,網羅的かつ精度のよい実験データが得られた。その中から花成との関連が注目されている転写因子の機能に関する知見は,今後のC/N誘導性花成研究において重要な意味をもつ。現在,この転写因子に関する生化学および遺伝学的解析も進めている。また,メタボローム解析結果からも注目される候補因子が得られており,今後これらの詳細な機能解析を行うことで,C/N誘導性花成の制御機構の解明を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
まず,C/N誘導性花成のシグナル伝達因子候補FBH4の機能に関して,より詳しい解析を進める。具体的には,この因子のリン酸化修飾による転写活性制御メカニズムおよび機能欠損変異体を用いたC/N誘導性花成の表現型に関する遺伝学的な解析を進める。 さらに,既存の花成変異体やC/N応答制御因子ATL31との交配実験や鍵代謝物であるトレハロース-6リン酸シグナル経路における機能解析を行うことで,FBH4機能の統合的な理解を目指す。これらの解析から,C/N誘導性花成制御メカニズムの包括的解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に形質転換植物を用いた詳細な機能解析を実施するため。
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次年度使用額の使用計画 |
FBH4遺伝子の形質転換植物を用いて,花成制御に関する詳細な機能解析を実施する。
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