研究課題
本研究では「栄養素シグナルによる植物の花成制御機構の解明」を目指し,以下の3研究課題に取組んでいる。H27年度の解析結果として,以下のような成果を得た。1)花成変異体を用いたC/N誘導性花成の解析:昨年度確立した,大気中CO2濃度と根圏窒素栄養条件の制御によるC/N処理系を用いた花成誘導実験を行った。その結果,野生型シロイヌナズナにおいて,光周期依存性花成の制御因子であるCOおよびその下流の花成ホルモンであるFT遺伝子の発現がC/Nに応答して変動することが示された。さらに, COおよびFT変異体においてC/N誘導性花成が抑制されることが分かった。2)C/N誘導性花成におけるシグナル伝達ネットワークの解析:昨年度実施したC/N処理後のリン酸化プロテオーム解析から,C/N誘導性花成のシグナル伝達因子候補として転写因子FBH4が同定された。FBH4はCO遺伝子の転写活性化因子であり,光周期依存性の花成に関わることが報告されている。当該年度はFBH4に着目した実験を進め,FBH4およびそのホモログを欠損する4重変異体を用いたC/N処理実験から,この変異体ではC/N誘導性花成が抑制されることが示された。3)メタボローム解析によるC/N誘導性花成鍵代謝物の同定:昨年度実施したC/N処理後のメタボローム解析から,糖代謝物であるトレハロース-6リン酸の量が顕著なC/N応答性を示すことが分かっている。当該年度は,トレハロース-6リン酸合成に関わる酵素群(TPS)のトランスクリプトーム解析を行い,クラスIに分類されるTPS遺伝子群の発現がC/N誘導性花成と関連があることが分かった。これらの解析結果から,これまで未知であったC/N栄養シグナルが,転写因子FBH4のリン酸化修飾を介して,光周期依存性の花成制御経路とクロストークすることで,植物の花成を制御することが明らかとなった。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 3件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)
Journal of Proteomics
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
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http://www.sci.hokudai.ac.jp/CSF2-web/