研究課題
本研究では、ダイズ根圏N2O発生へのカビ脱窒の寄与・様式・削減策を明らかにするために、 (1) 根圏分離フザリウムの共脱窒ポテンシャル、(2)硝化細菌とフザリウムの共生体の形成と機能、(3) 15N同位体のN2O分子偏在性解析によるカビ由来N2O発生の寄与度評価、(4)非脱窒型フザリウムによるN2O削減の可能性を明らかにすることを目的としている。昨年度は、15N同位体のN2O分子偏在性解析によるカビ由来N2O発生の寄与度評価と分離フザリウムがダイズ根圏で優占種である事実を明らかにし、ダイズ根圏において亜硝酸を基質とするカビ脱窒でN2Oが生成していることを証明した。そこで、本年度は (1) 根圏分離フザリウムの共脱窒ポテンシャル、(2)硝化細菌とフザリウムの共生体の形成と機能、(4)非脱窒型フザリウムによるN2O削減の可能性の実験を実施した。15N標識亜硝酸(99 atom%)を添加したGP培地で根圏分離フザリウムFK2株およびFK7株の培養液から生成されるN2Oの15N濃度をガスクロマトグラフ質量分析計で測定した。その結果、ハイブリッドN2O(15N14NO)は生成されたN2O の0.5-1.0%であり、大部分が亜硝酸窒素由来のみから生成されるN2O(15N15NO)であった。根粒抽出液を加えても同様であった。したがって、共脱窒で生成されるN2Oは確かに生成されているが、量的には少なかった。アンモニアを添加したGP培地に分離フザリウムを接種し土壌懸濁液を少量接種したところ、アンモニアの消費とN2O生成が起ったが、植継ぎ培養を続けたところその活性は消失したので、一過的な硝化細菌とフザリウムの共生体は形成されたものの、安定な実験系の構築はできなかった。非脱窒型フザリウムFK1株をダイズ根圏に接種したところ、根圏からのN2O発生が明らかに低下した。本結果は、ダイズ根圏のようなCN比が低い環境において、非脱窒型フザリウム接種によるN2O発生削減の実用化に繋がる可能性がある。
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