好気的な土壌は温室効果ガスであるメタン(CH4)の吸収源である。アンモニアモノオキシゲナーゼ(AMO)はCH4酸化も行うことが知られているが、土壌中で実際にCH4酸化を主に担っているのはメタンモノオキシゲナーゼ(MMO)であり、AMOによるCH4酸化は無視できると考えられてきた。一方、我々のこれまでの研究において、窒素施肥土壌におけるCH4酸化は、メタン酸化菌ではなく主にアンモニア酸化菌が担っている可能性が示唆されている(Akiyama et al. 2014)。しかし同様の現象の報告例はなく、窒素施肥土壌で一般的な現象であるかどうかをさらに検証する必要がある。このため、農耕地土壌のCH4酸化におけるアンモニア酸化細菌の役割を明らかにすることを目的として研究を行った。 淡色黒ボク土壌の堆肥長期連用圃場、化学肥料長期連用圃場、同圃場隣接の森林土壌を用いた土壌コアのインキュベーション実験により、CH4吸収量とアンモニア酸化能・AMOおよびMMO存在量の関係を調べた結果、相関はみられなかった。また同様に、灰色低地土、黄色土、多腐植質黒ボク土、淡色黒ボク土の堆肥長期連用圃場、化学肥料長期連用枠圃場および同圃場隣接の森林土壌の土壌コアのインキュベーション実験により、CH4吸収量とアンモニア酸化能・AMOおよびMMO存在量の関係を調べた結果、相関はみられなかった。これらの結果より、今回調査した土壌において、CH4吸収へのAMOの貢献は大きくないと考えられた。実際の圃場においては、主に施肥の影響および温度変化によるAMOの存在量の変動に加え、CH4吸収はこれよりも短い時間スケールでのフラックス変動および季節変動があるため、さらに長期的な試験が必要と考えられた。
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