研究課題
2011年3月11日に発生した東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の爆発事故によって大気中に放出された放射性物質は広範な地域に環境汚染をもたらした。現在、最も問題となるのは物理的半減期が長い137Csが長期にわたって存在し、農産物を介して生体内に取り込まれることである。現在では検査体制の整備から基準値を超える食品が消費にまわることはなくなっている。一方で自主規制として設けられている20-30Bq/kg未満の放射性Csは検出限界未満となり、消費への不安は未だに存在している。申請者は腸内フローラを構成する細菌が効率よく放射性セシウムを取り込むことを見出した。安全性が確認されているだけでなく、生きた状態で腸管に届き、腸管内で増殖し、かつそれが長く定着するのではなく糞便としてすみやかに排出が促進されることが望ましい。国民のニーズにこたえる緊急課題であるため、すでにプロバイオティクスとして使用されている乳酸菌およびビフィズス菌に焦点を絞りこんだ。本年度は研究協力者らとともに効果の認められるビフィズス菌を選抜し、これを特殊ビーズに封じ込める技術開発を行った。種々の食品において、カリウム含有量は炎光光度計とカリウムイオン電極を用いて測定した場合、両者はよく一致する。本研究での使用のために測定が容易なカリウムイオン電極を入手した。一方で有用乳酸菌及びビフィズス菌の選抜を行った。ここで問題となったことはラクトバチルス属の細菌では生育環境にKイオンが多く必要とされ、これを減少させると生育阻害が起こった。生物の生理的機能においてCsはKの代替にはならず、取り込み実験ではビフィズス菌が適していると考えられた。
3: やや遅れている
病気:申請者に腫瘍が見つかり、その摘出手術を行ったため。
CsはKと似た挙動を示すとされている。 観測されている「濃縮」は環境中と細胞内での電解質濃度の差に由来し、Kに対して際だってCsを濃縮する様な生物種は観測されていない。代謝に伴って常に生体内のアルカリ金属、アルカリ土類金属は細胞を出入りしており、微生物もこれらのイオンを取り込むことが予想できる。そこで、取り込み効率の良い細菌を用いてプルシアンブルー、アルギンサン塩などの吸着材の効果の判定を微生物取り込み阻害効果によって比較する。選抜結果から、Bifidobacterium longumのいくつかの株を候補とし、吸着阻害についての実験を行う。ホールボディカウンター(NaIシンチレーションカウンター)によって体内残存の放射性Csの測定を行うための基礎実験を開始する。最大サイズの牛ファントムの作成はすでに成功しており、最小サイズのマウスファントムを作成する。体内の放射性Csがこのシステムで測定できるかどうかを検討する。
病気:申請者に腫瘍が発見され、その摘出手術を行ったため研究に遅れが生じた。
前年度に行えなかった実験を速やかに行う。次年度分としてKイオンの影響についての実験に伴う試薬およびプラスチック器具類の使用ができなかった分の残額として繰り越されている。カリウムイオン電極を用い、カリウムが放射性Cs取り込みに及ぼす影響を選抜した有用細菌を使用して調べる。よく知られた放射性Cs吸着材の評価系を作成する。さらに平成28年度に予定しているマウスホールボディカウンター(NaIシンチレーションカウンター)によって体内残存の放射性Csの測定を行う。最大サイズの牛ファントムの作成はすでに成功しており、最小サイズのマウスファントムを作成する。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
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