研究課題
2011年3月11日に発生した東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の爆発事故によって大気中に放出された放射性物質は広範な地域に環境汚染をもたらした。畜産業では、この影響で放射性ヨウ素による牛乳汚染および放射性セシウムによる牛肉汚染が問題となった。現在、最も問題となるのは物理的半減期が長いCs-137が長期にわたって存在し、農産物を介して生体内に取り込まれることである。見えない放射能に対する国民に不安は大きい。このことから、放射性セシウムの吸収抑制や排出促進に効果がある薬品・食品への関心が高まっている。そこで、微生物による生体からの効果的除染方法の基盤を確立することを目的に実験を行った。腸内フローラ構成細菌4菌株、プロバイオティック細菌3菌株を供試菌とし、福島原発旧警戒区の牛由来ブイヨン添加BHI培地またはMRS培地で培養した。培養終了後、菌体と培養上清に分離し、各々の放射線量を測定すると同時に、培地のKイオン濃度を測定した。BHI培地では腸内フローラ構成細菌の放射性Csの取り込み率は38-81%と高かった。一方、MRS培地ではプロバイオティック細菌の取り込み率は6%以下となった。死菌では取り込みを認めなかった。CsはNa-KポンプでKイオンと同様に同族のCsが取り込まれると考えられている。取り込み率の差違は各培地の違い-すなわち、Kイオン濃度に依存すると考えた。実際、MRS培地のKイオン濃度はBHI培地よりも有意に高かった(p<0.01)。プロバイオテック細菌の評価にはK濃度の低い新たな培地を作る必要があるとして、変法スキムミルク培地を作成した。この培地を使用することで放射性Csの取り込み評価が可能となった。また、BHI培地にKを添加すると有意に取り込み率は低下した。
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