研究課題
地球表層環境に広く棲息する好気性従属栄養環境細菌群は、超低栄養な環境下でも細胞を増殖させる機構を有していると考えられる。我々は環境汚染物質分解能を有する典型的な好気性従属栄養環境細菌株が、アルコールデヒドロゲナーゼホモログ遺伝子 (adhX) を高発現させると有機炭素源非添加無機培地でCO2固定しながら生育する現象 (oligotrophic表現型) を見出した。本研究では、本現象の機構を解明すると共に、その普遍性を明示し、有用細菌の超低栄養条件下での培養への可能性を検討することを目的として研究を行った。本年度は、まず、大腸菌で高発現・精製したAdhX産物がNAD+依存的アルコールデヒドロゲナーゼ (ADH) 活性を有すること、および、AdhX産物のADH活性と本表現型に相関活性があることを明示した。一方、UT26株のadhX高発現プラスミドを他株に導入したところ、UT26株類縁のAlphaproteobacteria のみならず、Betaproteobacteriaに属する株でもoligotrophic表現型が観察された。また、UT26株のadhXおよび、UT26類縁菌株のadhXホモログは水平伝播しやすいと推定される領域に存在していた。さらに、UT26株ではspontaneousなoligotrophic突然変異株が比較的容易に取得され、不均衡変異導入法により変異率を高めた状態では、高頻度でoligotrophic突然変異株が取得されたが、UT26のadhX破壊株では、変異率を高めた状態でもoligotrophic突然変異株は全く検出されなかった。以上の結果は、adhXが水平伝播し、かつ、高発現変異が起こりやすいことを示唆している。すなわち、adhX関与のoligotrophic表現型が環境常在細菌が有する普遍的な低栄養環境適応戦略のひとつである可能性を提示することができた。
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