研究課題/領域番号 |
26660057
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
青木 誠志郎 東京大学, 総合文化研究科, 学術研究員 (10334301)
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研究分担者 |
伊藤 元己 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (00193524)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 進化 / 生物情報学 / 系統学 / 植物生理学 / 多様性 / 共生 / 植物-微生物相互作用 / 分子進化 |
研究実績の概要 |
異なる生物間の共生や協力のために必要な条件は何か、そしてその進化はどのようにして起きたのかについて、根粒共生系をもとに解析を行っている。具体的目標として遺伝子レベル、特にゲノムレベルでの解析を中心に、共生の起源を明らかにすることを目指している。相利共生においては自己資源の利他的な振り分けが必須であり、より速く大量の自己複製を目指すハウスキーピング遺伝子の理想とは対照的に、共生相手からの見返りとリンクした共進化が、共生遺伝子に働くと考えられている。このため共生遺伝子は他の遺伝子とは異なる分子進化的特徴をもつことが予測されている。 一般的な研究における大規模なゲノム情報を用いた解析としては、いくつかの進化的仮定に基づく機能推定法(系統プロファイル、ロゼッタストーン法など)が開発され、各種データベースとともに公開されてきた。しかしながら我々が根粒菌の共生関連遺伝子であるnod遺伝子群を用い、これらのデータベースでそのいくつかの方法を用い機能推定を行ったところ、ほとんどのnod遺伝子の共生機能が、どのデータベースでも推定できなかった。nod遺伝子群の分子進化、分子系統を解析しこの理由について調べたところ、これらのデータベースにおける進化的機能推定法が、nod遺伝子群の特定のためには、単純すぎる仮定に基づいていたためと考えられた。 そこで本研究では『進化的特徴の類似性に基づく遺伝子機能推定法』を開発することにより、機能進化ゲノミクス解析を展開しつつある。2015年度の計算的アプローチでは、世界においてこれまでに解析が進んだ数万のバクテリアゲノム情報を用い、統計的・系統的な解析を行った。現在これらをもとに、大規模ゲノム比較解析を進めている。また、2013年に発表した論文では見つからなかった、新たな根粒形成遺伝子における進化現象を発見し、現在論文執筆を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生物情報学の研究手法を取り入れ、全バクテリアの情報を用いた解析を行っている。本学生物情報科学科の岩崎渉先生に協力を仰ぎ、現在、ゲノム解析のなされた全バクテリアの比較ゲノム解析を行っている。当初に計画していたよりも多様な共生遺伝子の推定ができはじめているが、初めて学ぶ分野であるため、進捗に当初の予定より時間がかかっているため。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度にはバクテリア全ゲノムを用いた統計学的解析と分子系統学的解析を行った。本年度は、大規模ゲノム比較解析を行う計画である。またその折に見つかった根粒形成遺伝子についての新たな進化現象について、本年度中に論文を投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
世界的に見て研究の進んでいない分類群に属する、新しい根粒菌のゲノム解析を行う必要ができたため。また感染実験によるmixed noduleの解析を行うため。
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次年度使用額の使用計画 |
新しい根粒菌のゲノム解析を行う計画である。また,感染実験の実験機材の購入を行う予定である。その他、高性能のコンピューターの購入を行う計画をしている。
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