Corynebacterium glutamicumのC50カロテノイド生合成経路を大腸菌に導入し、末端水酸基の起源が非メバロン酸経路(メチルエリスリトールリン酸経路)の中間体であるヒドロキシメチルブテニル二リン酸(HMBPP)にあるか否かを確認した。当初は計画に従い非メバロン酸経路の遺伝子破壊を試みたが、メバロン酸経路を導入した大腸菌においても破壊株を得ることができなかった。そこで阻害剤の利用、および大腸菌遺伝子の過剰発現によって、HMBPPが末端イソプレン単位の直接の前駆体であることを示唆する結果を得た。この結果は、HMBPPを基質とするプレニルトランスフェラーゼの2つ目の発見例である。一部のプレニルトランスフェラーゼはアリル性カルボカチオンを反応中間体とすると考えられており、そのカルボカチオンを不安定化することが予想される水酸基を持ったHMBPPがプレニルドナー基質となるとすれば驚きである。そこでカルボカチオンを反応中間体とすることが証明されている全E型プレニル二リン酸合成酵素を用いてHMBPPが基質となるか否かを確認した。その結果、一部酵素はHMBPPをドナー基質としてプレニル鎖延長反応を触媒し、同種酵素がHMBPPからカルボカチオンを生成できることが明らかになった。しかしながら、アクセプター基質としてHMBPPを受け入れる酵素はなく、期待したようなポリエーテル生成物は得られなかった。
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