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2014 年度 実施状況報告書

体腔形成細菌の新規な金属輸送機構の解明とその放射性物質・レアメタル回収への応用

研究課題

研究課題/領域番号 26660062
研究機関京都大学

研究代表者

橋本 渉  京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (30273519)

研究分担者 村田 幸作  摂南大学, 理工学部, 教授 (90142299)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2016-03-31
キーワード体腔形成細菌 / アルギン酸 / 金属結合タンパク質 / X線結晶構造解析 / 原子間力顕微鏡 / 電子顕微鏡
研究実績の概要

酸性多糖アルギン酸を資化するSphingmonas属細菌A1株の細胞表層に形成される体腔と金属輸送Efe系に焦点を当て、それらの機能発現機構を解析した。
A1株細胞は、増殖に伴いアルギン酸カルシウムゲル(直径約3 mm)を分解した。その際、ゲルに接着した細胞に、表層構造が窪んだ体腔の形成が認められた。さらに、原子間力顕微鏡で解析したところ、生細胞においても体腔が形成されることを確認し、その窪みの深さが76~147 nm程度であることが分かった。また、体腔形成部位は、その周囲と比較すると高電位があることから、この高電位が負電荷を帯びたアルギン酸の濃縮に寄与していると考えられる。
アルギン酸は金属キレート作用を示すため、金属輸送Efe系の構成要素である基質結合タンパク質Algp7のアルギン酸結合能を解析した。X線結晶構造解析により、Algp7の高分解能の立体構造を決定した。高分解能の立体構造を用いて、アルギン酸オリゴ糖とのドッキングシミュレーションを行い、その複合体モデルに基づいて、アルギン酸の結合に関わる候補残基を見出した。それらの残基を部位特異的変異によりAlaに置換した変異体E194A、N221A、およびK68A/K69Aを作製し、変異体のアルギン酸結合能を紫外吸収法により解析した。野生型と変異体の各タンパク質と種々の濃度のアルギン酸とを反応させて、280nmにおける吸収スペクトル変化量をアルギン酸濃度に対してプロットし、飽和曲線を作成した。E194AとN221Aについて、野生型Algp7とほぼ同様な結合解離定数が算出されたのに対し、K68A/K69Aはアルギン酸低濃度で吸収スペクトルの変化も少なく、飽和曲線も得られないことから、有意な(20倍以上)結合能の減少が見られた。このことから、Lys68とLys69はアルギン酸結合に関わる重要な残基であることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

高分子多糖であるアルギン酸を細胞外で低分子化することなく、細胞内に直接取り込むSphingomonas属細菌A1株を対象に、微生物学史上初めて見出された巨大な輸送器官(体腔)について、今年度はその生細胞での形成機構と特性を明らかにすることができた。
透過型電子顕微鏡では真空条件下で細胞を解析するため、これまでに生細胞での情報を得ることが困難であった。今回、原子間力顕微鏡でA1株細胞を解析することにより、生細胞での体腔形成を再確認し、そのサイズも計測することができた。さらに、表面電位を測定することにより、体腔とアルギン酸との静電的相互作用について直接的な確証を得た。
体腔に発現が予想される基質結合タンパク質Algp7の構造機能解析を進め、本タンパク質のアルギン酸結合を立体構造の観点から明らかにすることができた。アルギン酸が鉄をキレートすること、および鉄輸送Efe系タンパク質であるAlgp7がアルギン酸と結合することから、本タンパク質が鉄をキレートしたアルギン酸と結合し、鉄とアルギン酸に分配する機能が示唆される。
以上の知見は、細菌の細胞表層に形成される巨大な分子器官の形成機構、ならびに細菌の生育に必須の鉄を取り込む分子機構の解明に繋がる。

今後の研究の推進方策

鉄輸送Efe系の構成要素である基質結合タンパク質Algp7について、その金属結合特性を原子吸光分析法と示差走査型蛍光定量法により明らかにする。金属として、鉄のみならずレアメタルとの結合性を評価し、本タンパク質のレアメタル回収への応用展開を図る。金属結合モチーフ(HxxE)をもつAlgp7の金属結合に関わる構造要因を明らかにするため、金属が結合したAlgp7の結晶構造を決定する。結晶構造に基づいて、モチーフと金属結合との相関ならびに金属と結合するアミノ酸残基を特定する。

次年度使用額が生じた理由

交付金額(直接経費)が申請金額より大幅に下回ったため、購入予定であった高額な設備備品の購入を見送った。そのため、若干の物品費(消耗品費)に余裕が生じたが、さらなる研究を加速するため、当該年度と次年度の予算を合わせて使用する。

次年度使用額の使用計画

次年度は、基質結合タンパク質Algp7の金属結合特性を解析するため、各種の金属化合物を一般化学試薬として購入する。本タンパク質の構造解析のため、結晶化試薬とプレートを消耗品として購入する。X線回折データの取得と学会での成果発表のため、出張旅費を計上する。結晶化では多検体スクリーニングを行う必要があるため、非常勤職員を雇用し謝金を支払う。また、論文発表に伴う雑誌掲載料や別刷り費用を支出する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 3件)

  • [雑誌論文] Structural insights into alginate binding by bacterial cell-surface protein2015

    • 著者名/発表者名
      Kanate Temtrirath, Kousaku Murata, and Wataru Hashimoto
    • 雑誌名

      Carbohydrate Research

      巻: 404 ページ: 39-45

    • DOI

      10.1016/j.carres.2014.11.008

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Structure-based conversion of the coenzyme requirement of a short-chain dehydrogenase/reductase involved in bacterial alginate metabolism2014

    • 著者名/発表者名
      Ryuichi Takase, Bunzo Mikami, Shigeyuki Kawai, Kousaku Murata, and Wataru Hashimoto
    • 雑誌名

      The Journal of Biological Chemistry

      巻: 289 ページ: 33198-33214

    • DOI

      10.1074/jbc.M114.585661

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Alginate-dependent gene expression mechanism in Sphingomonas sp. strain A12014

    • 著者名/発表者名
      Chie Hayashi, Ryuichi Takase, Keiko Momma, Yukie Maruyama, Kousaku Murata, and Wataru Hashimoto
    • 雑誌名

      Journal of Bacteriology

      巻: 196 ページ: 2691-2700

    • DOI

      10.1128/JB.01666-14

    • 査読あり / 謝辞記載あり

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公開日: 2016-05-27  

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