研究実績の概要 |
Acinetobacterの水溶性キノプロテイン・グルコース脱水素酵素(sGDH)は,ペリプラズムに存在する酸化還元酵素でありながら,その電子受容体が見つかっていない。一方,酢酸菌の膜結合型キノプロテイン・グリセロール脱水素酵素(GLDH)は種々の糖アルコールの酸化反応を行うが,アポ型酵素が多くの割合で存在し,PQQ易脱離性の原理および理由が明らかになっていない。そこで,昨年度に続き,以下のように,それらの機能解析を行った。 1. Acinetobacter sGDHの機能解析 大腸菌高発現株から精製したsGDHのPMS-DCIP還元活性を調べると,中性側の酵素活性では見られず,アルカリ側の酵素活性のみが活性酸素(O2-)スカベンジャー(SOD及びMn)によって阻害された。今回,このO2- 生成反応を詳細に検討し,電子受容体であるPMSの介在による反応以外に,酵素反応で生成するPQQH2によってもO2-が生成している可能性が示された。今後,sGDHによるPQQ還元活性, PQQH2の酵素から離脱の有無,の解析を行う。 2.酢酸菌GLDHの精製とその機能解析 昨年度は,酢酸菌Gluconobacter frateurii CHM43のADH欠損株を作成しGLDHの精製を行ったが,安定な酵素を得ることができなかった。今回,この欠損株にGLDHを過剰発現させて精製を行うことで,そのPurity及び回収率に優れた精製酵素を得ることができた。得られた精製酵素の酵素活性(PMS-DCIP)を調べると,酸性側とアルカリ側と2つの至適pHを有すること,Ca及びMgどちらでもPQQのホロ化が可能なことが示された。これらの精製酵素を用いて,酸性・アルカリpHでの酵素活性のO2-スカベンジャーの影響を調べた結果,sGDHと同様,アルカリ側の酵素活性のみSOD及びMnによって阻害されることが示された。
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