研究課題/領域番号 |
26660070
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
河野 利恵 大分大学, 医学部, 病院特任助教 (20468002)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 乳酸菌誘導多能性幹細胞 / 多分化能 / 増殖能 / 山中因子 |
研究実績の概要 |
乳酸菌誘導多能性幹細胞は、iPS細胞、ES細胞と同様の3系統(内胚葉系、中胚葉系、外胚葉系)への分化能力は有している。しかし、iPS細胞、ES細胞ほどの増殖能力は有していない。 本研究の目的の一つはその違いが以下に生じてくるのかを解明することである。 現在までに乳酸菌誘導多能性幹細胞では、NANOG遺伝子の発現がiPS細胞、ES細胞と比較して非常に高いことが分かった。NANOGは未分化性の維持に重要な因子の一つである。つまり、乳酸菌誘導多能性幹細胞はiPS細胞、ES細胞と同様の分化能を有していると考えられる。乳酸菌誘導多能性幹細胞とiPS細胞、ES細胞の決定的違いはその増殖能にある。iPS細胞、ES細胞は個体あるいは臓器を形成できるだけの増殖能を持つ。だが、乳酸菌誘導多能性幹細胞は分化はするがその後増殖せず静止状態を保つ。MTTアッセイを用いた結果からをそれを裏付けるようなデータが得られている。さらにリアルタイムPCR法を用いた解析から、乳酸菌誘導多能性幹細胞はiPS細胞、ES細胞と比較してOCT4,SOX2の発現量が低い状態を維持することが分かった。もちろん、iPS細胞は、山中因子(Oct3/4・Sox2・Klf4・c-Myc)を強制発現させることにより形成されるため、OCT4,SOX2の発現量が高い。転写因子OCT4,SOX2の下流因子が増殖、細胞複製の促進を行っているしているとすれば、その発現量が低い乳酸菌誘導多能性幹細胞の増殖能も低くなる。 以上が、研究計画の第位1項目である"乳酸菌誘導多能性幹細胞とiPS細胞の多能性能(プラス増殖能)の比較”に関する現在までの結論である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表は、平成27年4月より熊本大学 大学院生命科学研究部 神経分化学講座 特任助教より、家庭の都合上自宅がある大分大学 医学部付属病院 呼吸器内科 医員に移籍いたしました。 当初はある程度研究業務を行う予定であったが、病院業務が多忙を極めたため研究活動が十分に行えない状況が続きました。これに関しては、移籍時の詳細な打ち合わせの欠如が招いたことであり大いに反省すべき点であると思います。 様々なご配慮により、本研究費の1年間の延長と病院業務の軽減をしていただき深く感謝しております。
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今後の研究の推進方策 |
NANOGによる未分化能の維持、OOCT4,SOX2による増殖能の促進に関して、乳酸菌誘導多能性幹細胞、iPS細胞、ES細胞のエピゲノム解析を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表:河野利恵は家庭の都合のため、平成27年度4月に熊本大学 大学院生命科学研究部 神経分化学 特任助教より大分大学 医学部付属病院 呼吸器内科 医員に移動となった。移動時の打合せの不備のため当初予定していた研究業務ではなく病棟業務が主体となったため研究の追行が行えなかった。 次年度はより研究主体に行えるポジションに移動となっている。
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次年度使用額の使用計画 |
本申請の研究計画第一項目の"乳酸菌誘導多能性幹細胞とiPS細胞の多能性能の比較”に関してはある程度結論がでている。次年度では第二項目の”乳酸菌誘導多能性細胞とiPS細胞のエピゲノム解析”に関する解析を実施していく予定である。
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