研究実績の概要 |
この研究は、熊本大学生命科学部 神経分化学教室との共同研究である。熊大のグループが、乳酸菌リボゾームがヒト線維芽細胞に取り込まれることによりリプログラミングを起こすことを解明している(Ito N.& Ohta K.Dev. Growth. Differ.2015)。しかし、乳酸菌によるリプログラミングでは、ES細胞用の細胞塊のうちの一部の細胞しか幹細胞マーカー(NANOG, SOX2, SSEA-3, etc,)しか示さない。つまり、リプログラミングされていない細胞も細胞塊の中に含まれている。これは、細胞塊の中のほぼすべての細胞が幹細胞マーカーを示すiPS細胞との大きな違いである。この原因として乳酸菌由来リポソームの取り込み効率を考え現在検討中である。 また、乳酸菌によるリプログラミング細胞は、未分化能に関連するNAAOGの発現が極めて高い(Ohta,et, al., Plos One 2012)。しかし、iPS細胞と違って再分化能は低く、分化誘導培地で培養してもiPS細胞ほどの分化誘導は起きなかった(分化マーカー遺伝子の発現は低かった)。つまり、乳酸菌によるリプログラミング細胞には、直接山中ファクターを細胞に導入するiPS細胞ほどの分化ドライビングを起こさない。 現在、iPS細胞が再生医療における優れたツールであることが、多方面の研究により示されている。ならば分化能のおとる乳酸菌によるリプログラミングをどのように位置づけるかが今後の課題である。 我々は、癌細胞を乳酸菌によりリプログラミングしアポトーシス経路に誘導、死滅させることができないかを今後検討していくつもりである。
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