研究課題
CdSやCdSeといった物質のナノ粒子には、その粒径に応じて光学的、電気的特性が変化する現象が見られる。これを量子ドット効果という。この特性をいかして、これらのナノ粒子は生体組織の蛍光標識などに使用されている。本研究では、微生物由来のシステインデスルフラーゼIscSを使用し、L-システイン由来のS化学種とCdイオンを反応させることにより常温常圧下でCdSナノ粒子を合成する方法を検討した。N末端にHis6-tagをもつIscSを過剰発現する大腸菌JW2514を、Cd2+とL-システインを添加した培地で培養したがCdS粒子の形成は見られなかった。次に、IscSを過剰発現した大腸菌の粗抽出液を調製し、CdCl2とL-システインを加えて吸光スペクトルを測定したところ、CdSナノ粒子に由来する可能性のある320 nmにおける吸収が見られた。TEMによる観察とEDSを用いた組成分析を行ったところ、CdとSをCd:S = 1:1.13の比率で含む、CdSと考えられるナノ粒子が認められた (Fig. 2)。DLSを用いこのサンプルの粒径を測定したところ、3~12 nmの粒子であった。
2: おおむね順調に進展している
本年度は微生物酵素によるCdSナノ粒子の合成に成功しており、これは従来にない初めての例である。従って研究は概ね順調に進展していると言える。
今後は、反応条件を変化させることによりCdSナノ粒子の合成に与える外部因子の影響を明らかにする他、Cd以外の金属イオンを用いた各種金属ナノ粒子の合成への応用を目指す。
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