申請者は、Lactobacillus bulgaricusを小麦粉と脱脂粉乳の等量した水分50%程度の培地で培養すると、通常の液体培養に比べて生菌数あたりの乳酸生産量が1/50程度に減少することを発見し、本課題を申請した。 しかし、その後の研究で、使用した乳酸菌株には、平板培養による生菌数計測においてコロニーを形成しない乳酸菌が含まれており、生菌数を過少評価していたことが判明した。そこで、アミノ酸、核酸、ビタミン、無機塩から成る合成培地を基本として、培地の水分を変化させ、乳酸生産がよりはっきりと抑制される条件の検索を行った。Lactobacillus casei ATCC334、Lactococcus lactis NBRC12007などが培養できることを確認した。 平成27年度は、穀類などの植物や魚粉などの動物由来の天然物に由来する粉末を培養基として、乳酸生産が抑制される可能性のある低水分環境を中心に、広く検索を行った。その結果、ある天然物の粉末を培地としてLactobacillus casei ATCC 334を培養すると、48時間後の菌体濃度が7.0×10^9 CFU/g-materialに到達するが、菌体当たりの乳酸生産量は0.6 pg/CFUと他の固体培地やMRS液体培地の1/4~1/10に留まり、pHも6付近で維持された。この現象はLactococcus lactis subsp. lactis NBRC 12007、 Lactobacillus sakei NBRC15893、Lactobacillus buchneri JCM1068でも認められた。この天然物は、水分を90%に増やして培養した場合にも、同様に乳酸生産量の減少が確認された。また、合成培地にこの天然物の熱水抽出液を添加すると、生菌数が同程度であるにも関わらず、合成培地と比較して菌体当たりの乳酸生産量が11 pg/CFUから3 pg/CFUに低下した。現在、メタボローム解析により、どのように代謝が変化したかを解析している。(この天然物の名称は、特許出願準備中のため、伏せさせていただきます。)
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