研究課題
化石資源代替として,あるいは各種有用素材原料として,バイオマス利用促進は喫緊の課題である.主要バイオマスであるセルロースの酵素糖化において低速度・低収率の主要原因の一つとして「2段階の生成物阻害」が挙げられる.最終産物グルコースによりβ-グルコシダーゼ(Bgl)が阻害され,これに伴い蓄積するセロビオースがセルラーゼを阻害する.本研究は,この解除を目指して実施している.放線菌由来Bgl(St1Bgl3)はグルコースによる阻害の程度が低く,濃度によっては活性上昇すら観察される.この本酵素に特徴的な活性化についてメカニズムの解明と酵素分子上の構造因子の同定を行い,新しい酵素活性化機構の提唱を目的として本研究を進めている.構造因子導入によるBglの分子育種,すなわち単糖・少糖による活性化機構を備えた酵素の創出,ならびに糖化反応への異性化酵素等の併用により,セルロース酵素糖化の高速化・高効率化を実証し,酵素科学の立場からバイオマス利用を推進のための基盤的研究を実施する.平成27年度には,放線菌βグルコシダーゼSt1Bgl3の組換え酵素を用いて,活性化剤として各種単糖・少糖を各種基質と組み合わせて更に詳細な反応解析・速度論的解析を行い,酵素反応側からの活性化(活性化剤・基質の組み合わせによっては阻害)について細心の解析を行ない,活性化機構のモデルの検証を行った.あわせて,StBgl3の結晶化・構造決定も目指したが現状有用なデータは得られていない.そこで各種の近縁β-グルコシダーゼの既知構造を利用してSt1Bgl3の構造予測を行い,速度論に基づく活性化モデルと矛盾しない活性化の構造因子を想定し,変異酵素の作出・解析を通して,より詳細なモデルを提唱できた.
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