研究課題/領域番号 |
26660083
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伏信 進矢 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (00302589)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | グリコシダーゼ / シロイヌナズナ / イネ / β-アラビノオリゴ糖 |
研究実績の概要 |
我々は、糖質加水分解酵素(GH)ファミリー127および機能未知ドメイン(DUF)1680に分類されるβ-アラビノフラノシダーゼの活性中心が亜鉛に結合したシステインであることを明らかにした。システイン型の酵素はプロテアーゼではよく知られているが、グリコシダーゼでは前例がない。GH127-DUF1680は細菌、真核微生物、植物のゲノムに見つかり、植物細胞壁のヒドロキシプロリン-リッチ糖蛋白質(HPRG)および糖ペプチドホルモンの分解および再構築、ひいては植物の発生と成長に関わると予想されるが、機能と構造が分かっているものはビフィズス菌の酵素1種類のみである。本研究ではシロイヌナズナとイネのDUF1680タンパク質の機能を調べ、立体構造解析などを組み合わせてその作用機構を明らかにすることを当初の目的とした。研究の進展に伴い、植物病原菌が持つDUF1680遺伝子の機能・構造解析も目的に加えた。 本年度は、シロイヌナズナとイネ(日本晴)のcDNAライブラリー(理化学研究所と農業生物資源研究所から取り寄せたもの)からクローニングした5種のDUF1680遺伝子の発現条件を、昨年度に引き続き検討した。宿主として大腸菌だけでなくPichia pastoris酵母も用いて、さらに、インクルージョンボディの可溶化条件も検討した。 一方、昨年度までに確立した植物病原菌Xhantomonas由来のDUF1680の大腸菌における発現系を用いて、機能解析を行い、さらに結晶化スクリーニングにより結晶化条件を確立、予備的なX線測定を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
植物由来の遺伝子の大腸菌での発現において、インクルージョンボディの形成が起こったために、宿主、ベクター、発現条件などの検討を網羅的に行う必要があった。本年度は引き続き発現条件の検討、Pichia酵母を用いた発現、変性剤を用いた可溶化条件の検討を行ったが、いずれも活性のある可溶化蛋白質は得られなかった。 一方、植物病原菌X. campestrisが持つDUF1680遺伝子産物のうち1種類(XCV)で各種基質を用いた活性測定を行い、本遺伝子産物がビフィズス菌由来のGH127酵素と同程度のβ-L-アラビノフラノシダーゼ活性を持つことを明らかにした。また、X. campestrisの別株由来のDUF1680遺伝子産物(XCV)も用いて、2種類の蛋白質で結晶化を行ったところ、分解能がそれぞれXCCで1.52 A(オングストローム)、XCVで2.30 AのX線回折データセットを取得することに成功した。ただし他の構造既知のDUF1680酵素との相同性は低いため(配列同一性30%以下)、分子置換法が適用できず、初期位相決定に向けて現在セレノメチオニン置換体結晶を作成している。
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今後の研究の推進方策 |
植物由来遺伝子の発現条件の検討などで時間がかかったことから、本年度に計画していた植物病原菌由来酵素の結晶化およびデータ測定が遅れ、本年度中に予定していた位相決定が終わらなかったため。セレノメチオニン置換体の結晶はNative結晶に比べて結晶成長および回折能が悪いために、時間がかかっている。位相決定およびその後の構造精密化、さらに変異体作製とアッセイのための試薬、器具(消耗品)に用いる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
植物由来遺伝子の発現条件の検討などで時間がかかったことから、本年度に計画していた植物病原菌由来酵素の結晶化およびデータ測定が遅れ、本年度中に予定していた位相決定が終わらなかったため。位相決定に用いるセレノメチオニン置換体の結晶はNative結晶に比べて結晶成長および回折能が悪いために、時間がかかっている。
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次年度使用額の使用計画 |
植物病原菌由来酵素の結晶の位相決定およびその後の構造精密化、さらに変異体作製とアッセイのための試薬、器具(消耗品)に用いる予定である。
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