我々は、糖質加水分解酵素(GH)ファミリー127および機能未知ドメイン(DUF)1680に分類されるβ-アラビノフラノシダーゼの活性中心が亜鉛に結合したシステインであることを明らかにした。システイン型の酵素はプロテアーゼではよく知られているが、グリコシダーゼでは前例がない。GH127-DUF1680は細菌、真核微生物、植物のゲノムに見つかり、植物細胞壁のヒドロキシプロリン-リッチ糖蛋白質(HPRG)および糖ペプチドホルモンの分解および再構築、ひいては植物の発生と成長に関わると予想されるが、機能と構造が分かっているものはビフィズス菌の酵素1種類のみである。本研究ではシロイヌナズナとイネのDUF1680タンパク質の機能を調べ、立体構造解析などを組み合わせてその作用機構を明らかにすることを当初の目的とした。研究の進展に伴い、植物病原菌が持つDUF1680遺伝子の機能・構造解析も目的に加えた。 本年度は、シロイヌナズナとイネ(日本晴)のcDNAライブラリー(理化学研究所と農業生物資源研究所から取り寄せたもの)からクローニングした5種のDUF1680遺伝子の発現条件を、昨年度に引き続き検討した。宿主としてPichia pastoris酵母を利用し、インクルージョンボディの可溶化条件を中心的に検討した。一方、昨年度までに、結晶化条件を確立した植物病原菌Xhantomonas由来のDUF1680の構造解析を行い、新規なGH146ファミリーの立体構造の決定に成功した。その結果、Xhantomonas由来のβ-L-アラビノフラノシダーゼにはこれまでのGH127ファミリー酵素には含まれない新規なCBM様のドメインが付加しており、その仮想的基質結合部位が活性部位に向いていることが明らかとなった。
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