光依存型プロトクロロフィリド還元酵素(LPOR)は、プロトクロロフィリドのC17=C18二重結合を還元し、クロロフィルaの直接の前駆体クロロフィリドaを生成する。LPORはNADPHからヒドリド転移によりプロトクロロフィリド還元を触媒するが、このヒドリド転移の駆動には光によるプロトクロロフィリドの励起が必要である。LPORは、NADPHなどのピリジンヌクレオチドを補酵素とする短鎖デヒドロゲナーゼファミリーとよばれる大きな酵素ファミリーに属するが、光要求性はLPORのみが有する固有の性質である。このことから、LPOR固有のアミノ酸配列ループドメインには光依存性を付与する構造要因を有すると推察され、進化の過程で何らかの選択圧によってこの構造が選抜されてきたと推察される。このループを利用することで任意の酵素に光依存性という性質を付与できるかもしれない。そこで、本研究では、このループを欠失したLPORをもつシアノバクテリアSynechocystis sp. PCC 6803の変異株por欠損株から新たなLPORの進化を促す実験を行ってきた。por欠損株は、一定以上の強光下では生育できない形質を示す。por欠損株に対して、終止コドンを含まないセミランダムはDNA配列に置換したLPORライブラリーによって、強光耐性を示す復帰変異株を単離することで、新たなLPORの創出を目指している。形質転換効率を向上させるためにrecJおよびslr2031の欠損をもつ3重欠損株を利用して、強光耐性を指標としてスクリーニングを行った。しかし、得られた強光耐性株は、いずれも新たなLPORを創出した株ではないことがLPORの遺伝子の塩基配列決定で明らかとなった。このことは、より効率的なライブラリー構築とより大規模なスクリーニングを行うことが新たなLPOR創出に必須であることを示している。
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