バイオアベイラブルな亜鉛量を判定できる新規亜鉛欠乏診断法の確立

2014 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 26660086
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 神戸 大朋 京都大学, 生命科学研究科, 准教授 (90303875)
• 研究期間 (年度): 2014-04-01 – 2016-03-31
• キーワード: 亜鉛欠乏 / 診断法 / 健康増進 / 超高齢社会

研究実績の概要

近年、亜鉛欠乏者の数は増加しているが、高齢者は特にその傾向が強いことが報告されている。亜鉛欠乏状態にある高齢者は、味覚機能や免疫機能低下に加え、褥瘡や舌痛、皮膚炎に悩まされることも多い。通常、血清亜鉛の基準値を指標に体内亜鉛状態は判定されるが、血清亜鉛濃度には日内変動があり、また、炎症時にも低値になることなどから、血清亜鉛値では正確に体内のバイオアベイラブルな亜鉛量を反映できない点が大きな問題となっている。高齢者は、様々な慢性疾患を患うケースも多くなるため、正確な測定はさらに困難になる。超高齢社会を迎えた我が国において、信頼できる亜鉛欠乏診断法を確立する必要性は高まっており、本研究では、その確立を目指して研究を実施した。まず、亜鉛欠乏依存的に発現が変動することを見出している組織非特異的アルカリフォスファターゼ（TNAP）、炭酸脱水酵素IV（CA6）、亜鉛トランスポーターZIP4、ZIP5、ZnT2を、それぞれ、MBP融合タンパク質・GST融合タンパク質と融合させて大腸菌に発現させた。単一タンパク質として精製できた融合タンパク質は、抗原として使用し、ポリクローナル抗体・モノクローナル抗体の作成に使用した。この際、MBP・GSTに融合させた領域は、立体構造を予測したモデルから表面に露出することが予想される領域とした。ZIP4、ZIP5、ZnT2については、抗血清やモノクローナル抗体を産生する複数のハイブリドーマの樹立に成功した。樹立した各抗体がラット組織から調整したZIP4、ZIP5、ZnT2を亜鉛依存的に認識できることを確認した。TNAPとCA6については、表面に露出する抗原の作成を再度試みている。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

抗CA6、及び抗TNAPモノクローナル抗体作成に若干手間取っているが、亜鉛感受性タンパク質として、ZIP4、ZIP5、ZnT2を認識する複数の抗体の作成に成功し、ラット組織を用いてその有用性についての確認にも成功しているため。

今後の研究の推進方策

樹立した複数の抗体がZIP4、ZIP5、ZnT2を亜鉛依存的に認識できることを確認できたため、ELISAでこれらタンパク質の検出を試みる。特に、ZIP4に関しては、抗原として用いた細胞外ドメインが、亜鉛欠乏依存的に切断されることが分子レベルで示されているため、構築したELISAによってこのドメインが定量的に測定できることを示す。また、TNAPとCA6については、GST融合タンパク質抗原として精製タンパク質を調整できる目処がついたため、今年度は、これらに対する特異的抗体を樹立し、ZIP4、ZIP5、ZnT2の場合と同様、ELISAの構築を試み、その有用性を確認する予定である。

次年度使用額が生じた理由

残額のみで購入できる研究試薬がなかったため。

次年度使用額の使用計画

次年度に購入する試薬の購入費に当てる。

研究成果

• [雑誌論文] なぜ亜鉛は生命に必要なのか？ 亜鉛生物学の潮流と今後の課題について (2015)
  • 著者名/発表者名: 深田俊幸、神戸大朋
  • 雑誌名: 細胞工学 巻: 34 ページ: 310-316
• [雑誌論文] Simple and Rapid Separation of Soyasaponin Bb from a Soy Extract (2015)
  • 著者名/発表者名: Katano H, Okamoto N, Takakuwa M, Taira S, Kambe T and Takahashi M
  • 雑誌名: Analytical Sciences 巻: 31 ページ: 85-89
  • DOI: http://dx.doi.org/10.2116/analsci.31.85
  • 査読あり
• [雑誌論文] EPO gene expression promotes proliferation, migration and invasion via the p38MAPK/AP-1/MMP-9 pathway by p21WAF1 expression in vascular smooth muscle cells (2015)
  • 著者名/発表者名: Park SL, Won SY, Song JH, Kambe T, Nagao M, Kim WJ, Moon SK
  • 雑誌名: Cell Signal 巻: 27 ページ: 470-478
  • DOI: doi:10.1016/j.cellsig.2014.12.001
  • 査読あり
• [雑誌論文] Zinc Transporters (ZnT3 and 6) Are Downregulated in the Spinal Cords of Patients with Sporadic Amyotrophic Lateral Sclerosis (2015)
  • 著者名/発表者名: Kaneko M, Noguchi T, Ikegami S, Sakurai T, Kakita A, Toyoshima Y, Kambe T, Yamada M, Inden M, Hara H, Takahashi H and Hozumi I
  • 雑誌名: J Neurosci Res 巻: 93 ページ: 370-379
  • DOI: DOI: 10.1002/jnr.23491
  • 査読あり
• [雑誌論文] Molecular pathogenesis of Spondylocheirodysplastic Ehlers-Danlos syndrome caused by mutant ZIP13 proteins (2014)
  • 著者名/発表者名: in BH, Hojyo S, Hosaka T, Bhin J, Kano H, Miyai T, Ikeda M, Kimura-Someya T, Shirouzu M, Cho EG, Fukue K, Kambe T, Ohashi W, Kim KH, Seo J, Choi DH, Nam YJ, Hwang D, Fukunaka A, Fujitani Y, Yokoyama S, Superti-Furga A, Ikegawa S, Lee TR, Fukada T
  • 雑誌名: EMBO Mol Med 巻: . ページ: pii: e201303809
  • DOI: DOI 10.15252/emmm.201303809
  • 査読あり
• [雑誌論文] Methods to Evaluate Zinc Transport into and out of the Secretory and Endosomal-Lysosomal Compartments in DT40 Cells (2014)
  • 著者名/発表者名: Kambe T
  • 雑誌名: Methods Enzymol 巻: 534 ページ: 77-92
  • 査読あり / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] 分泌経路で成熟する亜鉛要求性酵素活性化の分子機構 (2014)
  • 著者名/発表者名: 神戸大朋、宮﨑志保
  • 雑誌名: 日本応用酵素協会誌 巻: 49 ページ: 9-15
• [雑誌論文] 亜鉛栄養と亜鉛トランスポーター (2014)
  • 著者名/発表者名: 神戸大朋
  • 雑誌名: ビタミン 巻: 88 ページ: 560-564
  • 査読あり
• [雑誌論文] 亜鉛トランスポーターの特徴と生理機能 - ZIP, ZnTトランスポーターと細胞機能・疾患との関連性 - (2014)
  • 著者名/発表者名: 辻徳治、神戸大朋
  • 雑誌名: 生体の科学 巻: 65 ページ: 370-378
  • 査読あり
• [雑誌論文] 食品と亜鉛－健康を保つための亜鉛摂取 (2014)
  • 著者名/発表者名: 橋本彩子、神戸大朋
  • 雑誌名: Functional Food 巻: 25 ページ: 48-51
  • 査読あり
• [雑誌論文] Current understanding of ZIP and ZnT zinc transporters in human health and diseases (2014)
  • 著者名/発表者名: Kambe T, Hashimoto A and Fujimoto S
  • 雑誌名: Cell. Mol. Life. Sci. 巻: 71 ページ: 3281-3295
  • DOI: doi: 10.1007/s00018-014-1617-0
  • 査読あり / 謝辞記載あり
• [学会発表] How are zinc-requiring enzymes activated by zinc transporters in the early secretory pathway? (2014)
  • 著者名/発表者名: Taiho Kambe
  • 学会等名: AsBIC7, 7th Asian Biological Inorganic Chemistry Conference
  • 発表場所: Gold Coast (Australia)
  • 年月日: 2014-12-04
  • 招待講演
• [学会発表] ZnT and ZIP: Essential zinc transporters for zinc transporters for zinc physiology and biochemistry (2014)
  • 著者名/発表者名: Taiho Kambe
  • 学会等名: Liaison Laboratory regular seminar, Institute of Molecular Embryology and Genetics, Kumamoto University
  • 発表場所: Kumamoto
  • 年月日: 2014-11-05
  • 招待講演
• [学会発表] How do zinc transporters play their specific roles in cellular and physiological processes? (2014)
  • 著者名/発表者名: Taiho Kambe
  • 学会等名: The 86th Annual Meeting of the Japanese Biochemical Society 2014
  • 発表場所: Kyoto
  • 年月日: 2014-10-17
• [学会発表] 亜鉛トランスポーターから視た亜鉛バイオロジー ～亜鉛の化学特性から欠乏性皮膚炎まで～ (2014)
  • 著者名/発表者名: 神戸大朋
  • 学会等名: 山梨皮膚疾患セミナー
  • 発表場所: 山梨
  • 年月日: 2014-09-29
  • 招待講演
• [学会発表] THE COORDINATED FUNCTIONS OF ZNT TRANSPORTERS IN THE ACTIVATION OF ZINC-REQUIRING ENZYMES (2014)
  • 著者名/発表者名: Taiho Kambe
  • 学会等名: The 4th International Society of Zinc Biology Meeting
  • 発表場所: Asilomar (USA)
  • 年月日: 2014-09-15
• [学会発表] 分泌経路において機能する亜鉛トランスポーター (2014)
  • 著者名/発表者名: 神戸大朋
  • 学会等名: 第25回日本微量元素学会学術集会
  • 発表場所: 岡山
  • 年月日: 2014-07-03
  • 招待講演
• [学会発表] 分泌経路の機能維持を担う亜鉛トランスポーター (2014)
  • 著者名/発表者名: 神戸大朋
  • 学会等名: 第9回トランスポーター研究会年会/JTRA2014
  • 発表場所: 名古屋
  • 年月日: 2014-06-15
  • 招待講演
• [学会発表] 亜鉛栄養と亜鉛トランスポーター (2014)
  • 著者名/発表者名: 神戸大朋
  • 学会等名: 日本ビタミン学会第６６回大会
  • 発表場所: 姫路
  • 年月日: 2014-06-14
  • 招待講演
• [学会発表] 乳児亜鉛欠乏予防基盤確立のためのZnT2遺伝子一塩基多型の影響評価 (2014)
  • 著者名/発表者名: 神戸大朋、黍原祥恵、逸村直也、成田宏史、児玉浩子
  • 学会等名: 第68回日本栄養・食糧学会大会
  • 発表場所: 北海道
  • 年月日: 2014-05-31
• [図書] Zinc Signals in Cellular Functions and Disorders (2014)
  • 著者名/発表者名: Fukada T, Kambe T
  • 総ページ数: 1-5
  • 出版者: Tokyo: Springer