葉緑体チラコイド膜においては、光合成電子伝達鎖を形成する膜タンパク質複合体が膜上で集合し、安定もしくは過渡的な超複合体を形成して機能することが報告されている。本研究では、電子顕微鏡を用いた単分子観測によって、それらを可視化することを目指した。 1)モデル系として、結晶構造解析に用いられている好熱性シアノバクテリアSynechococcus elongatus由来の光化学系II精製標品を用いて、位相板を有するクライオ電子顕微鏡を用いて画像を取得し、3次元立体構造の構築を試みた。結晶中とは異なり、光化学系IIの2つのダイマーが、酸素発生系を外側に向ける形で相互作用した像を認めた。一方、ダイマー同士の相互作用の仕方は、粒子間で少しずつ異なり、これが分解能が向上しない要因となっていると考えられた。位相板の使用は、直接分解能の向上に寄与しなかったが、クライオ電顕像から目視で異なる粒子を選抜するのに有効であると考えられた。 2)クラミドモナス変異体に、ヒスチジンタグを付加した光化学系II膜表在性タンパク質を形質転換により発現させ、アフィニティークロマトグラフィーによって光化学系II複合体を精製した。その結果、集光タンパク質を結合したPSII-LHCII超複合体のみが濃縮されることを見出した。電子顕微鏡解析により、得られた粒子の状態を確認し、さらなる精製条件の最適化を行った。
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