研究課題/領域番号 |
26660090
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
木村 誠 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (10204992)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | シグナル応答 / 腸炎ビブリオ / トキシン/アンチトキシン |
研究実績の概要 |
腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus) は低温や低塩濃度などのストレス条件化において、“生きているが培養できない(VBNC)”状態へと移行する事が知られている。最近、腸炎ビブリオのVBNC状態への移行にトキシン/アンチトキシン(TA)システムの関与が示唆されている。当研究室では、腸炎ビブリオゲノム中にTAシステム・vp1842/vp1843を見出した。本研究では、vp1842/vp1843を欠損した腸炎ビブリオ変異株を作成し、vp1842/vp1843のVBNC状態移行への関与を検討するとともに、トキシン遺伝子・vp1843のDNAジャイレースの阻害活性について検討した。 まず、腸炎ビブリオノックアウト用ベクター・pYAK1を用いて、相同組替えによりvp1842/vp1843を欠損した腸炎ビブリオ変異株を作成した。この変異株を用いてVBNC状態移行実験を行ったところ、変異株は野生型と比較してわずかに速度は遅いものの、VBNC状態へ移行したことから、vp1842/vp1843はVBNC状態への誘導に関与していないことが示唆された。 次に、トキシン・VP1843の大腸菌DNAジャイレースの阻害活性を弛緩型pUC19を基質とし、DNAジャイレース阻害抗生物質・ciprofloxacinを指標として検討した。その結果、VP1843は濃度依存的にDNAジャイレース活性を阻害した。一方、トキシン/アンチトキシン複合体であるVP1842/VP1843は、DNAジャイレースの活性を阻害しなかった。さらに、VP1843によるDNAジャイレースの阻害において、VP1843の濃度依存的に線状DNAが増加することが分かった。以上の結果より、VP1843の強い細胞増殖抑制活性は、DNAジャイレースを標的としたDNA複製反応の阻害で、VP1843は抗生物質・ciprofloxacinと同様に、DNAジャイレースのDNA再結合反応を阻害していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記述した研究計画を実施し、上述の研究成果を得ているから。
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今後の研究の推進方策 |
上述したように、腸炎ビブリオのトキシン。VP1843はDNAジャイレースの阻害活性を持つことが明らかになった。本年度は、VP1843とDNAジャイレース複合体の結晶構造を決定し、VP1843のDNAジャイレース阻害機構を原子レベルで明らかにする。
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