放線菌のゲノム上にコードされているFab様蛋白質が新規タイプのポリケタイド合成酵素(PKS)であることを証明した。 昨年度までの研究により、Saccharopolyspora属細菌由来の新規Fab様蛋白質Aがアルキルメチルピロンを与えることが示された。また、Fab様蛋白質がβケト酸のアシルキャリアプロテイン(ACP)エステルとmethylmalonyl-CoAからアルキルピロンを合成することをin vitro反応により示した。本年度は、Saccharopolyspora属細菌のゲノムにもう1コピー存在するFab様蛋白質Bの機能を解明した。放線菌S. coelicolor M1146をホストとし、Fab様蛋白質Bを高発現させ、その培養上清をHPLC分析した。その結果、空ベクターや脂肪酸合成酵素の形質転換株には見られない化合物のピークが複数観察された。これらの化合物を順相および逆相クロマトグラフィーにより精製し、NMRおよび高分解能MSで構造解析を行った。その結果、Fab様蛋白質Bはベンジルメチルピロンを与えることが判明した。また、in vitro反応により、Fab様蛋白質Bは、phenylacetyl-CoA、malonyl-CoA、methylmalonyl-CoAからベンジルメチルピロンを合成することを示した。 PKS は、ketosynthase(KS)の配列と酵素全体の型で分類されている。type I PKSはモジュール型・FabF/Bであり、type II PKS はサブユニット型・FabF/Bである。Type III PKSは単独型・FabHとサブユニット型・FabHの二種類がある。モジュール型・FabH、単独型・FabF/Bは報告例がない。本研究により単独型・FabF/Bの発見に成功した。
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