研究実績の概要 |
昨年度の研究において、AM菌Gigaspora margaritaの胞子表面から単離したAgrobacterium tumefaciens TM-M3株の生産するシデロフォアであるアグロバクチンがG. margaritaの菌糸分岐を強く誘導することを見出した。そこで、代表的な菌根ヘルパーバクテリアとして知られるPseudomonas fluorescensの生産するシデロフォアであるピオベルジン(PVD) がAM菌の生育応答を誘導するのかを調べることにした。また、植物由来のシデロフォアについてもAM菌の生育応答を調べた。これらのシデロフォアをG. margaritaに処理したところ、アグロバクチン及びニコチアナミンにおいて菌糸分岐が誘導されたが、PVDや2'-デオキシムギネ酸では分岐誘導は見られなかった。さらにもう一つの代表的なAM菌であるRhizophagus irregularisについてシデロフォアに対する生育応答を調べたところ、アグロバクチン及びニコチアナミンでは菌糸分岐が誘導され,次世代胞子形成も観察された。しかし,PVDでは生育に顕著な変化は認められなかった。 次にシデロフォアに対するR. irregularisの遺伝子応答について調べた。R. irregularis のゲノムには3つのシデロフォア鉄錯体トランスポーター遺伝子ホモログSIT1, SIT2, SIT3が存在することが分かっている。そこで,バクテリア及び植物シデロフォアで処理したR. irregularisでのこれら遺伝子の発現解析をqRT-PCRにより行った。その結果,アグロバクチン及びニコチアナミンによりSIT2の発現が誘導されることが分かった。
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