研究課題/領域番号 |
26660104
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
蕪山 由己人 宇都宮大学, 農学部, 教授 (20285042)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 機能性食品 / アミノ酸 / コラーゲン / 水酸化プロリン |
研究実績の概要 |
本研究ではアミノ酸の一種である水酸化プロリン(ヒドロキシプロリン)の機能に着目し,その構造異性体や誘導体の生理機能を探索する事を目的としている.ヒドロキシプロリンは,近年サプリメントとして注目されているコラーゲンの主要構成アミノ酸でもあり,これまでの研究から抗酸化性や,脂質代謝改善効果などが明らかとなってきていた.そこで,本研究では,水酸基の位置や立体配座が異なる異性体を用い,これらの生理活性に差異があるか検討する.更に,水酸基を複数有するジヒドロキシプロリンを合成する,あるいは珪藻から分離精製し,その生理活性を測定する.本年度は,異性体の解析に集中し,計4種類の異性体に関して,抗酸化活性の測定を行った.具体的な測定項目としては,リノレン酸酸化抑制アッセイ,ラジカル補足アッセイ,そしてサイクリックボルタンメトリ―による酸化還元電位の計測を行った.その結果,異性体間に若干の抗酸化性の差異は認められるものの,有意差を認めるまでには至らなかった.特に電気化学的な測定においては,従来より天然に最も多く存在し,コラーゲンに主に含まれる異性体に抗酸化性の優位性が認められた.これらの結果は,ヒドロキシプロリンに関しては,水酸基と他の官能基の立体的な距離や配置によっては,電気化学的な特性に大きな変化がない事を示す.従って,これらの異性体の昨日は,コラーゲン等の蛋白質の構造に与える影響が主であると考えられた.ジヒドロキシプロリンに関しては,有機合成が進行中であり,現在保護基が付加した化合物の合成までに至っている.今後,合成を完了し,また珪藻ちゅうから天然のジヒドロキシプロリンを精製し,その生理活性を解析する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,ヒドロキシプロリンの異性体の抗酸化性と,ジヒドロキシプロリンの抗酸化性の解析を中心的な目標としている.このうち,異性体の解析に関しては当初の予定分をほぼ遂行した.結果は必ずしも新たな強力な生理活性の発見には至ってはいないが,ジヒドロキシプロリンの解析に向けての対照として,意味のある結果と考える.また,この解析に向けて,サイクリックボルタンメトリ―の立ちあげや各種生化学アッセイの確立もおこない,いずれも信頼性の高いレベルでも実験系構築に至った.また,ジヒドロキシプロリンの合成も順調に進行しており,類縁体の生化学解析も開始している.今夏までに珪藻の培養系も確立できる見込みであり,ジヒドロキシプロリンの取得にも一定のめどが立った.以上より,研究の目的に照らして,おおむね計画通りに進行していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
今後はジヒドロキシプロリンの取得と,その生化学的な解析に集中する.生化学的な解析に関しては,既に確立済みなのでこれを用いる.これらに合わせて,皮膚や脳神経系の幹細胞の増殖や分化に関してもこれらの異性体や,ジヒドロキシプロリンの影響を解析する.
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