本研究では、コラーゲンを構成するアミノ酸である水酸化プロリンに注目し、その誘導体や誘導体を含む低分子ペプチドに特殊な生理機能がないか検討した。特に最終年度に重点化して行ったのは、通常水酸基の導入がひとつである水酸化プロリンに対して、さらに水酸基が導入されたジヒドロキシプロリンの抗酸化活性の評価と、水酸化プロリンを脱水した構造をもつピロールカルボン酸をN末端に有するペプチドの生理活性評価である。昨年度はこれらのアミノ酸の有機合成をおこない、これらを用いた。ジヒドロキシプロリンについては、サイクリックボルタンメトリーによる電気化学的な解析と脂質酸化抑制アッセイ、ラジカル補足アッセイを行った。プロリンに比べ、水酸化プロリンはいずれのアッセイにおいても強めの抗酸化活性が認められていたため、このアミノ酸にはより強い活性が期待された。しかし、いずれのアッセイにおいてもプロリンと同等、あるいはそれ以下の活性しか認められなかった。以上より、水酸基が二つ存在することは、必ずしも活性を高める効果を誘引しないことが明らかとなった。この結果は、活性測定をする際のpHを弱酸性(pH6)から弱塩基性(pH8)の範囲において複数条件下で検討しても同様であった。以上より、ジヒドロキシプロリンには強い抗酸化活性は認められないと判断した。一方で、従来研究により強い抗酸化活性が認められていたトリペプチド(OGP:hydroxyprolyl-glycyl-proline)のアミノ末端を脱水した誘導体型のペプチドには一定の抗酸化活性が認められた。OGPペプチドの代謝経路を考えた際に、アミノ末端の脱水は起きやすい反応であるため、この結果はOGPペプチドの抗酸化性のメカニズム解明に向けて基礎的な情報を提供したことになる。また、今後このような活性のつよいペプチドを作成するための基盤的な情報を得られたと考えられる。
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