ミルクには未知の免疫抑制因子が存在するのではないかという申請者独自の発想に基づき、牛乳より新たに見出した新規免疫抑制物質に関して平成26年度に引き続き検討したところ、下記の1)~2)の新たな知見を得ることができた。 1)新規免疫抑制物質の構造/活性相関の解明:新規免疫抑制物質の粗画分に含まれているラクトフェリン由来の4種類のペプチドの免疫抑制活性を詳細に検討したところ、その中の1種類のペプチドが新規免疫抑制物質と類似した免疫抑制活性を有することが見出された。すなわち、このペプチドは新規免疫抑制物質と同様、抗CD3抗体や抗原により誘導されるマウスT細胞増殖応答を完全に抑制することができ、IL-4、6、10、IFN-γなどのサイトカイン応答に対する抑制効果も新規免疫抑制物質と類似していた。これらの結果より、このペプチドが新規免疫抑制物質の少なくとも一部の免疫抑制活性の本体である可能性が考えられた。 2)新規免疫抑制物質のアレルギー疾患や自己免疫疾患の発症に及ぼす抑制効果の検討:先天的にTおよびB細胞を欠損しているNOD-scidマウスにnaiveなNODマウスの脾臓細胞を移入する実験系を構築し、これを用いて新規免疫抑制物質の腹腔内投与による1型糖尿病発症抑制効果を検討したところ、新規免疫抑制物質はin vivoで1型糖尿病の発症を遅らせることができることを明らかにした。すなわち、新規免疫抑制物質は1型糖尿病の新たな予防・治療法として有効である可能性が示唆された。
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