研究課題
Gタンパク質共役型の味覚受容体が甘味、旨味、苦味を感知するのに対して、酸味と塩味に関しては、報告されたイオンチャネル型受容体以外にも未知の受容機構が存在し、分子機構全体像の解明には至っていない。本研究では、酸味・塩味受容機構の全容解明に向けて、RNA-Seq法という新しい網羅的な遺伝子発現解析の手法を用いて、新規イオンチャネル型味覚受容体を同定することを目的とした。まず、RNA-Seq法を用いて、マウスの味蕾を多く含む有郭乳頭上皮(CV)と味蕾を含まない周辺上皮(Epi)における遺伝子発現プロファイルを比較した。CV値とCV/Epi値が大きい遺伝子は、味蕾特異的に強く発現することが予想される。約20匹のマウスからそれぞれの組織を単離し、全RNAを抽出した後、次世代シークエンサーを用いたRNA-Seq解析とERANGEによる発現情報解析を行った。その結果、CVかEpiの少なくとも一方で発現する遺伝子が約18,000個存在し、そのうちCV値>3かつCV/Epi値>3以上の遺伝子が約1,100個抽出された。これらには、味蕾特異的に発現し、味覚の受容伝達に重要な働きをする甘味、旨味、苦味、酸味受容体、Gタンパク質、下流シグナル伝達因子などが含まれることから、本実験方法の有効性が実証された。イオンチャネルは一般に、複数回膜貫通型の膜タンパク質である。そこで次に、公開プログラムTMpredやTMHMMを用いて膜貫通領域を予測し、候補遺伝子の絞り込みを行った。さらに、候補遺伝子のうち約70個に関して、有郭乳頭上皮においてどのような発現様式を示すかをin situ hybridization法を用いて調べた結果、約20個の遺伝子が味蕾特異的に発現することが示された。
1: 当初の計画以上に進展している
今年度の目標としていた味蕾特異的な発現を示す遺伝子が約20個得られた。さらに一部の遺伝子に関しては、来年度に行う予定であった異所発現系を用いた受容体候補の機能解析と、新規酸味・塩味受容体候補遺伝子欠損マウスの作出と表現型解析を既に開始しており、予備的な実験結果が得られているため。
引き続き、異所発現系を用いた受容体候補の機能解析と、新規酸味・塩味受容体候補遺伝子欠損マウスの作出と表現型解析を行う。
研究室で所有していた試薬類を使用したため。
異所発現系を用いた受容体候補の機能解析と、新規酸味・塩味受容体候補遺伝子欠損マウスの作出と表現型解析に使用する。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
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http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/tastescience/