研究課題
Gタンパク質共役型の味覚受容体が甘味、旨味、苦味を感知するのに対して、酸味と塩味に関しては、報告されたイオンチャネル型受容体以外にも未知の受容機構が存在し、分子機構全体像の解明には至っていない。本研究では、酸味・塩味受容機構の全容解明に向けて、RNA-Seq法という新しい網羅的な遺伝子発現解析の手法を用いて、新規イオンチャネル型味覚受容体を同定することを目的とした。前年度までに、in situ hybridization法を用いて、有郭乳頭上皮における発現様式を調べた結果、約20個の遺伝子が味蕾特異的に発現することが示された。今年度は、その中からあるイオンチャネルに着目し、電気生理学的な手法を用いてその特性の解析と、生体内における機能を解明する目的で、TALEN法を用いてその遺伝子欠損マウスの作出と表現型解析を行った。前者に関しては、ナトリウム濃度依存的な応答が観察された。後者に関しては、フレームシフト変異を生じる3種類のホモ欠損マウスを獲得した。様々な味物質溶液を用いて2瓶嗜好試験を行ったところ、現時点では野生型マウスと比較して嗜好率に明確な差は見られなかった。引き続き、様々な味物質溶液に対する味神経(鼓索・舌咽神経)応答解析を行っている。以上より、味蕾特異的に発現する新規イオンチャネル型味覚受容体候補を同定したが、酸味・塩味受容にどのように関与するかはさらに解析を進める必要がある。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
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http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/tastescience/